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【ミニコラム 第119号】盒馬会員店、いよいよ“撤退”?

メールマガジン
2025年08月06日

 
 中国の大手新興小売チェーン「盒馬(フーマー)」は、アリババグループが展開する次世代型スーパーです。生鮮食品に強みを持ち、オンライン注文・即時配達と実店舗での買い物を融合させた「ニューリテール(新小売)」の代表格として注目を集めてきました。そんな盒馬が展開していたのが、アメリカのサムズクラブやコストコをモデルにした会員制大型店舗「盒馬X会員店」です。最後の残った“上海・森蘭店”が8月末で閉店するとの報道があり、実質すべての会員店が姿を消すことになります。かつて「中国版の会員制店舗」として盒馬が大きな期待を寄せていたこの業態は、わずか数年で拡大から撤退へと転じることになっています。 
 「コストが高すぎて、回収に時間がかかる」ことが撤退の要因のようです。 
 会員制モデルは、店舗面積が1.5万平米級と巨大で、独自商品を開発するための投資も莫大。8〜10年かけてようやく黒字化するというビジネスモデルです。しかし、盒馬の経営陣はそこまで待つつもりはなかったようで、「スピード重視」の方針に切り替え。現在は、生鮮特化型の「盒馬鮮生」や、よりコンパクトで運営コストの低い「盒馬NB(コミュニティ型小型店)」にリソースを集中させています。 
 この数年、盒馬は「伝統的な生鮮市場」から「コンビニ」「スマートフードロッカー」「ショッピングモール内店舗」まで、ありとあらゆる業態に挑戦してきました。しかし、中国の小売業界は競争が熾烈。会員制業態においては、サムズやコストコが強固なポジションを築き、RTマート(大潤発)の「M会員店」や、低価格路線のALDI(奥楽斉)も存在感を増しています 
 以前のコラムでも「経営改革が進んでいるのではないか」と書きましたが、こうした背景の中、盒馬は収益性の低い事業の見直しを進め、明確に「利益優先」へと舵を切ったと見られます。企業の経営活動としては当たり前のことかもしれませんが、中国はやはり方針決定と実行のスピードが速いです。 

 

三石


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