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「無固定期間労働契約のインパクトと解決策」vol.2 無固定期間労働契約とは日本の終身雇用と一緒なのでしょうか。

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2007年08月17日

弁護士法人キャスト糸賀
弁護士 村 尾 龍 雄


■Q2 無固定期間労働契約とは日本の終身雇用と一緒なのでしょうか。

■A 日本の民法第627条第1項は「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」と規定します。しかし、この条文は労働者の使用者に対する解約の申入れの場合にはそのまま妥当するものの、使用者の労働者に対する解約の申入れについて、労働基準法第20条第1項が「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。」として、予告期間の定めを置くほか、解雇権濫用法理より、合理的な理由の存在が求められ、これを欠いたままでなされる解約の申入れは権利濫用(民法第1条第3項)に該当するとして、法的に容認されません。平成15年(2003年)改正で新設された労働基準法第18条の2が「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定し、従前から判例法理で認められてきたものを立法化した通りです。その結果、労働者は定年退職となり、又は定年解雇されるまで【3】、合理的な理由がない限り、労働契約を解除(解雇)されません。【4】よって、期間の定めのない労働契約は終身雇用の基礎となります。

 中国における無固定期間労働契約は、法形式として、期間の定めのない労働契約であるという共通項のほか、その法的効果として、定年【5】に達するまで、解除事由(労働契約法第39条、第40条)、終了事由(同第44条)のない限り、これを解除、終了することができないという共通項を有します。したがって、法形式、法的効果に着目する限り、日本の終身雇用と一緒である、ということができます。

 もっとも、異なる点がないわけではありません。すなわち、日本の終身雇用は、長らく終身雇用を中心とする日本の雇用文化を背景とするものであり、日本企業が正社員の一生涯の働く場所を保証するという決意のあらわれとして実施されるものであるのに対して、中国の無固定期間労働契約は、固定工制から労働契約制に移行した旧国営企業(全人民所有制企業)の労働者に適用される例こそあるものの、全体としては僅少であり、中国企業(内資企業)において労働契約を書面で締結する比率は100%に遠く及ばず、締結されるとしても、外商投資企業と同様、1年に1回雇止めの機会のある契約社員中心主義の雇用文化であるという現状に鑑みれば、無固定期間労働契約は今後労働契約法の強制により、やむを得ず増加するというものであって、両国の企業マインドには決定的な相違があります。

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【3】日本法は定年退職と定年解雇を区別しており、前者は労働契約の終了事由の約定として、定年に達したときに当然に労働契約が終了するもので、後者は定年に達したときに解雇の意思表示をし、それによって契約を終了させるものである、とされます(菅野和夫「労働法(第七版補正版)」弘文堂・406頁)。しかし、中国では労働契約法第44条本文、第2号は「労働者が基本養老保険待遇の法による享受を開始したとき。」を労働契約の終了事由であるとしており、定年に達したことを契機として、基本養老保険待遇を享受する限り(「統一的企業従業員基本養老保険制度の確立に関する国務院の決定」(国務院1997年7月16日発布・施行)第5条第1項第1文は「この決定を実施した後に就職する従業員で、個人納付料の納付年限が累計15年に達したものについては、定年退職後に月ごとに基本養老金を支給する。」と規定します)、労働契約法により労働契約の終了強制が働きます。

【4】解雇権濫用法理は合理的な理由を要求するのみならず、相当性の原則も併せて要求します。最高裁判例が「普通解雇事由がある場合においても、使用者は常に解雇しうるものではなく、当該具体的な事情のもとにおいて、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないときには、当該解雇の意思表示は、解雇権の濫用として無効になる」(最高裁昭和52年1月31日判決・労働判例(産労総合研究所)268号17頁)と述べる通りです。

【5】一般に男性満60歳、女性幹部満55歳、女性一般労働者満50歳です。例えば「労働及び社会保障部の国家規定に違反し、企業従業員が早期退職することを制止及び是正する関係問題に関する通知」(労働及び社会保障部1999年3月9日発布・施行。労社部発〔1999〕8号)の「一、国家の退職年齢に関する規定を厳格に執行し、規定違反の早期退職を断固として制止する行為」は「国家の法定する企業従業員の退職年齢は、男性満60歳、女性従業員満50歳、女性幹部満55歳である。(鉱坑等の)地下、高度、高温、特別な重労働又はその他の身体の健康に有害な業務(以下特殊業種という)に従事する場合、退職年齢は男性55歳、女性満45歳とする。病気又は労災以外で身体障害となり、医院の証明かつ労働鑑定委員会の確認により労働能力を完全に喪失した場合、退職年齢は男性満55歳、女性満45歳とする。」と規定します。

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