【ミニコラム 第2号】「100歳ローン」、「リレーローン」の次は「心のきずなローン」?
前回のコラムでは住宅ローンの繰上返済についてご紹介しましたが、近頃、中国の住宅ローン市場は新しい商品の誕生で賑やかになってきています。
たとえば、南寧、成都などではローン完済の上限年齢が引き上げられ、子供を連帯債務者とすれば100歳まで借りられる「100歳ローン(百岁贷)」や「リレーローン(接力贷)」が登場しました。また、未婚のカップルがその関係性を証明することなく申し込める「心のきずなローン(连心贷)」も出てきています。
こうした顧客のニーズに合わせた新しい商品が生み出される背景には、銀行に住宅ローン事業に対する焦りがあることがあるようです。中国では購入可能な住宅数に制限があり、もともと1軒目の住宅ローン金利は低めに、2軒目以降は高めに設定されていますが、多くの都市でその1軒目の住宅ローン金利がさらに下がっているにもかかわらず、不動産市場の売れ行きは芳しくなく、住宅ローンの新規融資数は縮小しています。他方で、前回ご紹介したように、ローンの繰上返済は依然として増加傾向にあるのです。
ただし、新商品だけで銀行が住宅ローン事業の経営難を解決できるかといえば、そう簡単ではありません。不動産市況の回復には、コロナ禍による所得への影響、消費意欲の低下、将来の不確実性への恐怖、予防的な貯蓄の増加といった障害がある一方で、「心のきずなローン」、「リレーローン」などの商品を銀行のリスク管理水準に到達させるには、実務において厳しい借入れ審査が行われることは間違いありません。
そうすると、これらの新しいローンは、商品名のインパクトで人目を引くほかに、実質的な意義はいかほどあるのか疑問を感じるところです。
(三石)