労務問題の根本原因はマネジメント層にも
キャストコンサルティング(上海)有限公司 総経理 前川晃廣
(中小企業診断士/証券アナリスト)
中国は、2008年リーマンショック後の世界同時不況からいち早く脱却し、2010年から景気を回復させ始めました。と同時に2010年前半から、中国の日系企業でストライキが散発しました。そしてその後、中国の経済発展と若年労働者の権利意識の高まりによって、ストライキ騒ぎのみならず、現法内の機関設計や人事問題で悩む日系企業が増えました。これらの問題が発生する原因を考察していくと、根本的なところに「マネジメント層の認識不足」が潜んでいることが見えてきます。
例えば人事考課において。日本では、今でも基本は新卒採用ですので、若い頃から同じ釜の飯を食べることで、会社が従業員の人となりを知り、また従業員も会社の社風に染まっていきます。そのため人事考課が感覚的なものになりやすいものの、しかしそれが社員の過半による評価とも一致し、結果的に一定の結果に収斂していきます。
一方中国では、中途採用が多く、また転職していく人も多い上に、文化や言語の壁もあるので、日本人経営層が中国人従業員と充分な意思疎通をする機会が少ないのが現実です。よって、一部の限られた情報だけに依拠した人事考課を行ってしまい、それが原因で中国人従業員、特にホワイトカラーの不満を招く傾向にあります。
また中国で、報酬制度の改革や目標管理の導入・各種研修などに取組んだものの、なかなか期待する効果が表れない場合、その原因が中国人従業員の能力の低さにあるかの如く嘆く日本人経営層が見受けられますが、それら改変や研修が中国人従業員の文化に合致したものであるかを、今一度検証すべきです。
そのためには、日本人経営層自らが人事業務に対するマインドを変える必要があるのですが、駐在員に人事・労務畑出身者がほとんどいない、ということもあり、自律的な意識変革が簡単に起こらないのも現実です。
業績を常時向上させ安定的経営を行っている多くの日系企業では、日本人経営層自らが人事・労務業務に確固としたポリシーを持って採用や人材育成に携わっています。そのような現法に「チェンジ」させていくためには、駐在員自らが意識を改革していくことも必要ですが、加えて、本社人事部門でも、人事・労務業務での中国現地法人へのサポートを惜しまないような体制作りが急務であるステージに入りつつあるものと思います。
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