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グループ会社への貸付債権放棄をした場合の税務上の取り扱い

Q&A
2022年12月26日

■相談内容

当社(中国現法)では、中国内のグループ会社へ委託貸付を行っています。当該会社は、業績不振により、今後清算を予定しており、その中で当該委託貸付については、債務免除/債権放棄をすることを検討しています。

当該委託貸付を当社が債権放棄した場合に、当社は債権放棄による損失・費用を、税務上損金として取り扱うことが可能でしょうか?
(日本では、同様のケースの場合には、子会社・グループ会社を整理する場合の損失に関する法令があり、損金として扱うことができると理解しています)

■回答内容

 「企業の資産損失の所得税損金算入に係る管理弁法(2018年)」国家税務総局 国家税務総局公告2011年第25号(国家税務総局公告2018年第31号)

第45条  企業が独立取引の原則に従い関連企業に対し資産を譲渡して発生した損失又は関連企業に対し貸付若しくは担保を提供して形成された債権の損失は、これらを控除することを許可する。ただし、企業は、専門項目説明をし、同時に、仲介機構の発行する専門項目報告及びその関連する証明資料を提出しなければならない。

 よって、関連会社に対する債権でも独立取引と同じようにその貸倒損失は損金算入が可能です。
独立取引かどうかの判断については、例えば妥当と思われる利息を取っているとか一般的な貸付条項が含まれているかと考えます。
 ただし、関連会社に対するものを含み、債権損失の損金算入は一定の資料の提出が求められています。以下はその根拠規定です。
 

第40条  企業の債権投資損失は、投資に係る原始証憑、契約又は合意及び会計計算資料等の関連する証拠資料によりこれを確認しなければならない。次に掲げる状況の債権投資に係る損失である場合には、関連する証拠資料を更に提出しなければならない。
 (1) 債務者又は担保人が法により破産を宣告され、若しくは閉鎖され、解散され、若しくは取り消され、営業許可証を行政処分として取り消され、又は失踪し、若しくは死亡した等の場合には、資産弁済証明又は遺産弁済証明を発行しなければならない。資産弁済証明又は遺産弁済証明を発行するすべがなく、かつ、上記事項から3年以上が経過する場合又は債権投資(クレジットカード貸越及び学業助成貸付を含む。)の残額が300万元以下である場合には、対応する債務者及び担保人の破産、閉鎖若しくは解散証明、取消文書又は工商行政管理部門の抹消証明若しくは照会証明及び請求記録等(司法請求、電話請求、信書請求及び訪問請求等の原始記録を含む。)を提出しなければならない。

 上記に鑑み、債務者側が解散の場合、解散後3年経過した後、または解散後3年経過していない場合でも貸付残高が300万元以下の場合、解散証明及び請求記録等必要です。貸付残高が300万元を超える場合は、3年間を待つのか、税務局と相談し、税務局に求められる追加資料を提出した上で損金算入が可能と解されます。
 解散証明は解散した場合にはもちろん入手できるはずですが、請求記録等も必要であることにご留意いただく必要があります。
 一方、解散前の債務免除の損金算入は、裁判所や仲裁機構の裁定文書が必要です。上記40条の(3)~(5)をご参考ください。

(3) 債務者が法律責任を引き受けることにより、その資産が借り入れた債務の返還に不足し、また、その他の債務引受者がない場合には、法院の裁定証明及び資産弁済証明を提出しなければならない。
(4) 債務者及び担保人が期限の到来した債務を償還することができず、企業が訴え又は仲裁を提出した場合において、債務者及び担保人に対する人民法院の強制執行を経て、債務者及び担保人にいずれも執行可能な資産がなく、人民法院が執行の終結又は終了(中止)を裁定したときは、人民法院の裁定文書を提出しなければならない。
(5) 債務者及び担保人が期限の到来した債務を償還することができない場合において、企業が訴えを提出した後に訴えの提起を棄却されたとき若しくは人民法院がこれを受理せず、若しくは支持しないとき又は仲裁機構の裁決を経て債務者の責任を免除(又は一部免除)するときは、求償を経た後に回収するすべのない債権については、法院が訴えを棄却した旨の証明、法院が受理せず、若しくは支持しない旨の証明、又は仲裁機構が債務者の責任を免除することを裁決した旨の文書を提出しなければならない。

 よって、解散前に損益を適切に反映するために貸倒引当金を計上し、解散後に損金算入を申請するのが妥当かと考えます。
 

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