【ミニコラム 第162号】実写ショートドラマからAIショートドラマへ

1年半前、本コラムで中国のショートドラマについて取り上げました。富豪の夫、強気な愛人、じっと耐える正妻。設定はどれも似たり寄ったりで、役者の演技も大根芝居。それなのにネットでは大流行し、これらの動画の版権を日本に販売したいという相談もあるとのことでした。
ところが今振り返ると、当時「ワンパターンだ」と感じていた部分こそ、むしろ「人間らしさ」だったのかもしれません。
2026年第1四半期、中国のショートドラマ市場では、AI制作作品の割合が95%を超えました。制作コストは実写の1割程度に抑えられ、「1人で1日に1本のドラマを作る」ことも現実になっています。しかし、数で圧倒しても、評価がついてくるとは限りません。4月に公開された4万4200本のAIドラマのうち、ヒット作の割合はわずか0.6%。視聴者の7割以上が続きを追わなくなったといいます。AIドラマでは、限られた顔ぶれのキャラクターを使い回し、汎用テンプレートに沿って量産されるため、「目に生気がない」という声が目立っています。
一方、春節シーズンの実写ショートドラマは、公開本数こそAIの50分の1にすぎませんでしたが、再生回数ではAI作品の25倍を記録しました。「少夫人来自东北2」(東北出身の若奥様2)は再生回数10億回を突破。これを受け、プラットフォーム側は60億元を投じて実写作品へとかじを切り、AI作品については一定額の収益を保証する制度も打ち切りました。
技術はコンテンツを大量生産できますが、視聴者がお金を払うのは、やはり生身の人間が見せる一瞬の輝きということでしょう。これは技術の敗北ではなく、感情の勝利なのかもしれません。
三石

















