【ミニコラム 第111号】Labubuが大ブレイク
6月10日、北京で開催されたオークションで、「初代コレクターズアイテム」として出品され、「世界に1つだけ」と謳われるミントカラーのLabubu(ラブブ)が108万元(約2100万円)という超高値で落札されました。手数料を含めた総額は124.2万元(約2500万円)にのぼり、トイフィギュアのオークション記録を塗り替えました。この結果に「そこまでの価値があるのか?」という議論が、たちまちSNSに広がっています。
Labubuは、ポップマートが手がけた大人気のキャラクターシリーズで、実は2015年に誕生していました。その人気が一気に加速したきっかけは、世界的なセレブたちの後押しによるものです。2024年、タイの人気スター・LisaがSNSにLabubuとの自撮りを投稿し、東南アジア市場で火がつきました。その後、リアーナをはじめとする世界的スターたちのプロモーションによって、Labubuは「アジア発のトイカルチャー」という枠を超えて、ニューヨークやロサンゼルスの街角で若者たちの話題となりました。シリーズの世界的ヒットを受け、ポップマートの時価総額は3600億香港ドル(約6.5兆円)を突破し、創業者・王寧氏の個人資産は200億ドル(約3.2兆円)を記録。フォーブスの世界長者番付トップ100入りを果たしました。
Labubuの「ブサカワ」な見た目 ― ギザギザの歯や左右非対称の瞳など、あえて可愛さから外れた個性的な造形は、従来の美的感覚を揺さぶり、現代の若者にとって社会的な「こうあるべき」から逃れるための「感情の逃げ道」となっているようです。
ブラインドボックス(盲箱)(関連コラム)を開けるときのドキドキ感は、「ドーパミンが出る」感覚をもたらします。特に、出現率1/144というシークレットアイテムは「運の良さ」の象徴として、手っ取り早く感情を満たしてくれる存在となっています。
この「感情的な満足」という点では、最近話題になった「2025年には感情消費市場が2兆元(約40兆円)を突破する」というトピックと通じるものがあります。ある調査では、Z世代を中心とした若者の60%以上が「消費はストレス解消の手段」と考えており、すぐに楽しさや癒しを感じたり、社会的承認を得るためにお金を使う傾向があるそうです。例えば、にぎにぎするだけで癒されるストレス解消グッズや、開運グッズ(水晶のブレスレットやお守り)、そしてLabubuのようなトイフィギュアなどが人気です。もはや実用性よりも社会的な「共感」が重視される時代といえるかもしれません。
個人的には、Labubuに対して強い購買欲は湧きませんが、「感情的な価値のために買い物をした」経験は確かにあります。もしかすると、この感情消費市場の盛り上がりに、私も微力ながら貢献しているのかもしれません。
三石