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【ミニコラム 第109号】食事前に「お湯で食器をすすぐ」習慣、どう思いますか?

メールマガジン
2025年05月30日


 最近、広東省の人々が外食時にレストランで出された食器(取り皿、コップ、箸、スプーン)を一度、自分でお湯(又はお茶)ですすぎ洗いする習慣(ちなみにレストランではすすぎ洗いした後のお湯を捨てる容器も提供してくれます。)について、ある教授が「非常に悪質で不快だ」と公に批判し、大きな話題となりました。その教授は「この行為は飲食店の衛生基準が不十分である証拠で、見た目も良くない」と指摘。これがきっかけで、単なる衛生意識の問題を超え、地域文化や著名人の発言のあり方を問う全国的な議論へと発展し、SNSでもトレンド入りするほど注目を集めました。
 科学的な実験によると、100℃のお湯でも5分以上かけなければ十分な殺菌効果は得られないそうです。実際、食器を数秒お湯ですすいだ程度では、ほこりや油分、洗剤の残りを洗い流すくらいの効果しかなく、消毒にはなりません。
 ですが、広東省の人々は、お湯で食器をすすぐ行為は広東の茶文化の延長と考えており、教授が「科学的理性」の立場からこの習慣の正当性を否定し、そこに込められた文化的な意味を認めなかったことについては、「科学と文化の議論を混同している」との批判も出ています。また、教授が「不快」といった強い言葉で地域の習慣を断じた点についても、「文化への理解や尊重を欠いている」、「地域に対する偏見的な見方だ」と多くの反発を招きました。
 実はこの習慣、広東省だけのものではありません。私自身は、十数年前に福建省を旅行した際に初めてこの習慣を目にしたことから、「お湯で食器をすすぐ」と聞いてまず思い浮かぶのは、今でも福建省の人々です。お店の人が、密封された食器と一緒に、熱いお湯と使用済みのお湯を捨てるための容器を持ってきてくれて、同席していた地元の人たちは、当たり前のように、ゆったりと、あるいは楽しむような様子で食器をすすいでいました。そして、「福建ではこうするのが普通なんですよ」と教えてくれました。
 そこには、食器の汚れを気にするような雰囲気はなく、店側も客のこの行為を煩わしく思っている様子はまったく感じられず、その光景がとても印象に残りました。
 今回の件について、私はあるネットユーザーの言葉にとても共感しています。
 「すすがないのは自由。でも、すすぐ人の自由も尊重してほしい」。
 

三石


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