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【ミニコラム 第101号】「遊煙族」への対応、上海市が動き出す

メールマガジン
2025年03月28日


 みなさんは、受動喫煙に悩まされた経験はありませんか?
 たとえば、道を歩いていて、前を行く人が紫煙を吐き出す。その煙が風に乗ってふわりと自分の顔をかすめる──。そんな場面に心当たりがある方も多いのではないでしょうか。
 こうした路上喫煙によって発生する煙は、中国語で「遊煙(ゆうえん)」と呼ばれています。
 実は数日前、そんな「遊煙」をめぐって、上海ディズニーランドでちょっとした騒動が起きました。
 3月25日の朝、入園前のセキュリティチェックで、蛇行する長い列に並んでいた父親がいました。ベビーカーを押しながら、なんと3時間近くも待っていたそうです。その間、近くの喫煙者からの煙に繰り返し悩まされ、ついに注意したところ、相手と口論になってしまいました。
 この出来事をきっかけに、ある人が市民サービスホットラインに相談。そこであらためて注目されたのが、上海市における公共の場での喫煙規制です。
 現在の規則では、幼稚園や小中学校、少年宮(青少年のための文化活動施設)、病院、スタジアムなどの屋外エリアに加え、公共交通の混雑した待合所などでも「遊煙」は通報の対象となります。違反した個人には最大200元、施設側には最大3,000元の罰金が科される可能性があるとのことです。
とはいうものの、たとえば今回問題になった「遊園地の屋外行列エリア」は、現行の6つの屋外禁煙エリアには含まれていません。上海市では、屋根の有無によって「屋内」と「屋外」を区別しており、屋根がなければ法的には屋外とみなされるのです。しかし、長時間にわたって人が滞留する場所を、単に「屋外スペース」として扱うことに違和感を覚える人も少なくないでしょう。
 では、こうした法律の網をすり抜けてしまう「遊煙」には、どう向き合えばよいのでしょうか?
 現在、上海市では「遊煙」対策に向けた新たな取り組みが始まっています。
 観光客や市民でにぎわう外灘(バンド)、武康路、豫園など8つのエリアでは、店内に禁煙マークを掲げる店舗が増え、街頭ボランティアが路上喫煙を優しく注意し、喫煙所の場所をわかりやすく示した「喫煙マップ」も配布されています。
 罰金を科すでもなく、強く非難するわけでもなく、あくまで「正しい行動を促す」というスタイルで進めているのが特徴です。「遊煙」問題の本質は、法による取り締まりと、人々のマナー意識の向上が、両立して進むことにあるといわれています。
 とはいえ、このような“やわらかい”アプローチが、実際にどれほどの効果をもたらすのか──。その答えが見えてくるには、もう少し時間がかかりそうです。
 

三石


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