キャスト中国ビジネス

【ミニコラム 第99号】海底撈(ハイディラオ)事件

メールマガジン
2025年03月14日


 最近、有名な火鍋チェーン「海底撈」で深刻な衛生問題が発生しました。3月6日、海底撈の個室で2人の男が火鍋のスープに放尿する動画がネット上で拡散。瞬く間に大きな話題となりました。
 上海市公安局黄浦分局によると、海底撈が警察に通報したことで調査が進み、事件は2025年2月24日早朝、上海のフランチャイズ店の個室で発生していたことが判明しました。関与したのは唐と呉(ともに17歳)という未成年の少年たちで、いずれも上海以外の地域から訪れていたとのことです。2人は酔った勢いでテーブルの上に立ち、それぞれ鍋に放尿。さらに、呉がその様子をSNSに投稿していました。現在、2人は警察により行政拘留処分を受けています。
 3月12日、海底撈は声明を発表し、この2人を提訴すると明言しました。また、2月24日から3月8日までに当該店舗で食事をした4,109件の注文について、食事代の全額返金と利用金額の10倍の賠償金を支払うことを決定。あわせて、事件の経緯についても説明を行いました。しかし、ネット上では「対応が遅すぎる」「広報が下手すぎる」といった批判が相次ぎ、多くのユーザーが不満を抱いています。
 実際、事件が発覚した当初は海底撈に同情する声が多く寄せられていました。しかし、3月8日、上海市の「警民直通車-黄浦」公式マイクロブログが事件を報じた後、海底撈がこの投稿をリポストし、その際に「店舗では鍋や食器をすべて交換し、引っ越しレベルの徹底清掃・消毒を実施した」と発表しました。さらに、事件を起こした未成年に対して「教訓を学び成長する機会を与えるべき」とコメントしたうえで、悪意を持って投稿を拡散した人には法的措置を取る可能性があると警告しました。この発言をきっかけに、世間の反応は一変し、海底撈の対応に批判が集まりました。
 ネットユーザーの間では、「被害者は消費者なのに、加害者に甘すぎる」「企業が勝手に寛大な態度を取るべきではない」といった批判が殺到。特に、事件発生から3月7日にかけて店舗を訪れた人たちは、知らずに問題の鍋や食器を使っていた可能性があるにもかかわらず、海底撈から直接的な謝罪はありませんでした。結局、世論の圧力が高まった4日後になってようやく返金・賠償の対応を発表しましたが、これでは消費者の信頼を取り戻すことは難しいのではないでしょうか。
 

三石


 >>> コラム

最新関連コンテンツ