キャスト中国ビジネス

【ミニコラム 第40号】「名門小中学校入学」詐欺事件で1000万元以上の被害

メールマガジン
2023年12月15日

 

 先頃、上海市静安区の警察が「名門小中学校入学」詐欺事件を検挙しました。警察の調べによると、2022年からわずか1年の間に、2回の入学シーズンで24人の保護者が騙され、合計で1000万元以上の被害が出たということです。事件通報者はビジネスコンサルティング会社に60万元の「入学金」をだまし取られたと訴えています。
 この事件の背景には、2020年から上海では私立校独自の生徒募集ができなくなり、志願者数が入学定員数を上回った場合は、抽選による選抜が行われるようになったことがあります。
 上海でも日本と同じく、義務教育段階は基本的に居住地学区内の学校に入学することになっていますが、人気のある学校の周辺では学区内の住所を手に入れるために家を買う人が後を絶たず、不動産価格が高騰しています。以前は、不動産が高すぎて手が出ない人は、子どもに試験や面接の対策をさせて私立の名門校に入学させることができましたが、抽選制度に変わってからは、「当たって砕けろ」で運に任せるしかなくなりました。今回の事件は、そんな、何としても子どもを名門私立校に入れたい親の心に付け込んだものです。
 報道によれば、容疑者は教育局や学校にコネをもっていると吹聴し、抽選に当たらなければ手数料を全額返金するとうたって「入学相談契約」を結び、高額の手数料を請求していました。もし抽選に当たれば容疑者のおかげ、当たらなければシステムの不調のせいだと言い逃れていたようです。全額返金の約束も、二次選抜があるとか、後で転校するチャンスがあるから一時的に他校に籍をおくだけ、などと言って先延ばしにしていました。また、保護者の態度によって、返金手数料を全部にするか一部するか対応を変えており、返金せざるを得ないときは、次に詐欺にひっかかった保護者から受け取ったお金をこれにあてるというような自転車操業で詐欺の資金繰りをしていました。
 そんな悪事がバレたきっかけは、容疑者が22年末にライブ配信の女性ライバーに夢中になったことです。500万元近い投げ銭をしてしまい、手元資金がなくなったため、今年に入ってからはかなり強引な詐欺を繰り返し、手数料の返金にあてる資金を確保することができなくなったことにより、だまされたと知った保護者の通報で警察に捕まり、すでに上海市静安区の人民検察院から勾留許可が出ているということです(中国では裁判所ではなく検察院が逮捕や勾留を決定できます)。
 容疑者はたった1通の契約書とたくみな話術で、24人もの保護者をだまし、1000万元以上を手にしました。その成功には、子供を名門校に入学させるために40万元~60万元もの高額な「入学金」を払うことを厭わない保護者の存在があったわけですが、傍から見れば、何でそこまで?と不思議に思われてなりません。
 

(三石)


 >>> コラムアーカイブ 

最新関連コンテンツ