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無固定期間労働契約の締結要件について

Q&A
2017年10月16日

■相談内容

無固定期間労働契約に関連する件で確認したい件がございます。
弊社は、会社設立後より営業系現地スタッフの雇用については、派遣会社(フェスコ)を経由し労働契約を交わしておりました。
しかし、2013年7月1日の改正労働契約法の施行により、順次、派遣会社経由での契約を直接契約へ切り替えをすすめました。
因みに、直接契約への切替えのタイミングで経済補償金の支払いはしておりません。

以上の状況において、
①無固定期間労働契約の締結回数について、直接雇用の締結からの起算(派遣会社経由での契約はカウントしない)でよろしいですか?
②2回目(無固定期間契約に入る前)の契約を長期化させることについて問題の有無、および(問題ない場合に)注意すべき点などお教え頂きたいです
③3回目の契約更新のタイミングで(会社側より)更新しないと判断した場合の、経済補償金計算の年数カウントの起算はどの時点ですか?
④無固定期間労働契約の要件として、「同一の雇用単位で連続して満10年以上」とありますが、
・連続10年の起算は、直接雇用の契約締結開始日からとの認識で宜しいですか?
・例えば、1回目の直接雇用を3年で契約締結し、2回目の契約を7年で更新する場合、無固定期間とはどのように認識すれば宜しいですか?

■回答内容

1.労働契約法における無固定期間労働契約に関する規定

 労働契約法第14条では、次に掲げる事由の一つがある場合、会社が労働者と労働契約を更新する際に、労働者が固定期間労働契約の締結を提起する場合を除き、無固定期間労働契約を締結しなければならないとしています。

 (1)労働者が当該雇用単位において連続して満10年勤務しているとき。
(2)雇用単位が初めて労働契約制度を実行し、又は国有企業が制度改革により新たに労働契約を締結するときに、労働者が当該雇用単位において連続して満10年勤務し、かつ、法定の退職年齢まで10年に満たないとき。
(3)2回の固定期間労働契約を連続して締結し、かつ、労働者に第39条並びに第40条第(1)号及び第(2)号所定の事由のない場合において、労働契約を更新するとき。【1】
 
 ご相談内容によると、貴社はこれまで派遣社員だった従業員と、順次、直接労働契約を直接締結する形態に切り替えているとのことです。
 上記「(3)2回の固定期間労働契約を連続して締結」でいう「2回」とは、同一の会社における労働契約の締結回数が2回であることを言いますので、派遣社員時代に派遣会社と締結した契約回数は含みません。

2.無固定期間労働契約の締結義務の発生時期

 上記「2回の固定期間労働契約を連続して締結」でいう「2回」の意味について説明します。
 まず、労働契約法97条では、「第14条第2項第(3)号所定の固定期間労働契約の連続締結に係る回数は、この法律の施行後に固定期間労働契約を更新したときから計算を開始する。」とされていますので、2008年1月1日以降に締結した労働契約からカウントが始まることになります。
 ここでご注意頂きたいのは、2回目の労働契約を締結した後、3回目の労働契約を更新するか否かにつき、会社側に拒否権があるか否かという点です。
 上海以外の地域においては概ね会社側に拒否権がないとする見解が法曹界に浸透していると言われているのに対し、上海では2009年3月3日に上海市高級人民法院が「『労働契約法』の適用に係る若干の問題に関する意見」を発布し、会社側には3回目の労働契約の締結を拒否する権利があることを支持する解釈を示したものと理解されています。
 つまり、上海等の一部の地域を除き、多くの地域においては2回目の労働契約期間が満了する際に、従業員が契約更新を拒絶しない限り、自動的に無固定期間労働契約を締結しなければならない可能性があります。
 よって、貴社が所在する法曹界においてどちらの解釈が有力であるかをまず確認する必要があります。

3.長期の固定期間労働契約の締結について

 契約期間を長くすることにより、従業員の会社に対する帰属感を高める効果が期待できる一方、労使関係がこじれた場合でも従業員に重大は就業規則違反等がない限り雇用し続けなければならない義務が生じることにもなります。
 長期の固定期間労働契約を締結することに法的問題はありませんが、かりに10年以上の固定期間労働契約を締結する場合、労働契約法14条2項本文及び同項1号により勤務期間が満10年となった段階で労働者には無固定期間労働契約を締結する権利が自動的に生じ、企業には選択権がなくなると解されますので、あまりに長い期間を設定する場合には注意が必要です。
 ただ、中国は日本に比べて転職のスピードが速く、30歳までに平均で3社の勤務経験があるという見方もあります。(業界や職種、地域によっても異なるでしょうが。)長期の労働契約を締結したとしても、従業員が自らの意思で退職してしまう可能性もあります。
 よって、雇用期間の設定に際しては、貴社の企業文化、業界の状況、職種、従業員のモチベーション等を総合的に勘案する必要があると言えるでしょう。

4.経済補償金の計算根拠となる勤務年数のカウント

 上記のとおり、従業員との3回目の労働契約の更新の際に、労働契約の締結を拒否できるか否かを確認する必要がありますが、以下では会社側が契約更新を拒否して労働関係が終了し、会社側に経済補償金の支払い義務が生じたことを前提に説明させて頂きます。【2】
 まず、ご相談内容によると、貴社では派遣従業員を直接雇用に切り替える際に、当該従業員に対して経済補償金は支払われていないとのことです。
 労働契約法実施条例第10条では、「労働者が本人の原因によらずに、原雇用単位から新たな雇用単位の業務に配置された場合には、労働者の原雇用単位における勤務年数は、新たな雇用単位の勤務年数に合算する。原雇用単位が既に労働者に経済補償を支払っている場合には、新たな雇用単位は、法により労働契約を解除し、又は終了して経済補償の支払いに係る勤務年数を計算する際に、労働者の原雇用単位における勤務年数を計算しない。」と規定しています。
 また、「労働紛争事件を審理する際の法律適用に係る若干の問題に関する最高人民法院の解釈(4)」【3】では、次に掲げる事由の1つがある場合、「労働者が本人の原因によらずに元の雇用単位から新たな雇用単位の業務に配置された」と認定するとしています。

 (1)労働者がなお元の業務場所又は業務職位において勤務し、労働契約の主体が元の雇用単位から新たな雇用単位に代わったとき。
(2)雇用単位が組織による委任派遣又は任命の形式により労働者に対して業務異動をさせたとき。
(3)雇用単位の合併又は分割等の原因により労働者の業務異動がもたらされたとき。
(4)雇用単位及びその関連企業が交代で労働者と労働契約を締結するとき。
(5)その他の合理的な事由

 貴社ご相談内容のように派遣従業員を直接雇用に切り替えた場合は、上記「(1)労働者がなお元の業務場所又は業務職位において勤務し、労働契約の主体が元の雇用単位から新たな雇用単位に代わったとき。」に属すると考えられますので、2008年1月1日以降に生じた、派遣従業員の期間を含む貴社での勤務期間をカウントし、経済補償金の算定根拠とする必要があります。

5.10年ルールのカウント方法

 労働契約法第14条2項1号の「労働者が当該雇用単位において連続して満10年勤務しているとき」とは、貴社が直接労働契約を締結してからの勤務期間のみが対象となりますので、派遣従業員だった期間の勤務年数は含みません。
 また、既述のとおり、貴社での勤務期間が満10年となった場合、従業員には自動的に無固定期間労働契約の締結を要求する権利が生じることになりますので、貴社が1回目3年、2回目7年の労働契約を締結し、2回目の契約期間が満了して当該従業員の勤務年数が満10年となった段階で、当該従業員には貴社に対して無固定期間労働契約の締結を要求する権利が生じることになるため、当該従業員が無固定期間労働契約の締結を放棄しない限り、貴社は当該従業員と無固定期間労働契約を締結しなければなりません。

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【1】「労働契約法」(2007年6月29日国家主席令第65号により公布、2008年1月1日施行。2012年12月28日国家主席令第73号により改正公布、2013年7月1日施行)

 第39条  労働者に次に掲げる事由の一がある場合には、雇用単位は、労働契約を解除することができる。
(1)試用期間において採用条件に適合しないことが証明されたとき。
(2)雇用単位の規則制度に重大に違反したとき。
(3)職責を重大に失当し、私利を図り、雇用単位に重大な損害をもたらしたとき。
(4)労働者が同時に他の雇用単位と労働関係を確立し、当該単位の業務任務の完了に重大な影響をもたらし、又は雇用単位の指摘を経て、是正を拒絶するとき。
(5)第26条第1項第(1)号所定の事由に起因して労働契約が無効となったとき。
(6)法により刑事責任を追及されたとき。
第40条  次に掲げる事由の一がある場合には、雇用単位は、30日前までに書面により労働者本人に通知し、又は労働者に1か月分の賃金を余分に支払った後に、労働契約を解除することができる。
(1)労働者が病を患い、又は業務外の原因により負傷した場合において、所定の医療期間満了の後に原業務に従事することができず、また、雇用単位が別途手配した業務に従事することもできないとき。
(2)労働者が業務に堪えることができず、養成・訓練又は業務職位の調整を経て、なお業務に堪えることができないとき。
(3)労働契約締結の際に根拠とした客観的状況に重大な変化が生じ、労働契約を履行するすべをなくさせ、雇用単位と労働者の協議を経て、労働契約内容の変更につき合意に達することができないとき。

【2】「労働契約法」では、下記のとおり、従業員が契約の更新を希望しているにもかかわらず、会社都合で契約を更新しない場合、会社に対して当該従業員の勤務年数に応じた経済補償金の支払いを義務付けています。

 第44条  次に掲げる事由の一がある場合には、労働契約は、終了する。
(1)労働契約の期間が満了したとき。
(2)労働者が基本養老保険待遇の法による享受を開始したとき。
(3)労働者が死亡し、又は人民法院に死亡を宣告され、若しくは失踪を宣告されたとき。
(4)雇用単位が法により破産を宣告されたとき。
(5)雇用単位が営業許可証を取り消され、閉鎖を命ぜられ、取り消され、又は中途解散する旨を雇用単位が決定したとき。
(6)法律及び行政法規所定のその他の事由
第46条  次に掲げる事由の一がある場合には、雇用単位は、労働者に経済補償を支払わなければならない。
(1)労働者が第38条の規定により労働契約を解除するとき。
(2)雇用単位が第36条の規定により労働者に対し労働契約の解除を提起し、かつ、労働者と協議により合意し、労働契約を解除するとき。
(3)雇用単位が第40条の規定により労働契約を解除するとき。
(4) 雇用単位が第41条第1項の規定により労働契約を解除するとき。
(5)雇用単位が労働契約に約定する条件を維持し、又は引き上げて労働契約を更新し、労働者が更新に同意しない状況を除き、第44条第(1)号の規定により固定期間労働契約を終了するとき。
(6)第44条第(4)号又は第(5)号の規定により労働契約を終了するとき。
(7)法律及び行政法規所定のその他の事由

【3】「労働紛争事件を審理する際の法律適用に係る若干の問題に関する最高人民法院の解釈(4)」(2012年12月31日最高人民法院裁判委員会第1566回会議により採択、2013年1月18日最高人民法院法釈[2013]4号により発布、同年2月1日施行)

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