【ミニコラム 第179号】中国のショートドラマはもう「単純」じゃない

2年前まで、中国のショートドラマといえば、「霸总(俺様社長)」ものや、頭を使わずに楽しめる痛快なストーリーが主流でした。その後、AIを使った作品の大量生産が進みましたが、不自然な「AI顔」が嫌われ、視聴を途中でやめる人も少なくありませんでした。ところが最近、「持械入宋」に代表される歴史ショートドラマが、こうした従来のイメージを大きく覆しています。
これらの作品は、主人公に都合のよい「チート設定」に頼るのではなく、確かな史料と知識を駆使した駆け引きで物語を展開しています。視聴者が面白さを感じるポイントも、無敵の主人公が活躍する姿から、登場人物があまり知られていない知識を武器に、歴史のはざまで生き抜く姿へと変わりました。また、単に結末を楽しむだけでなく、当時の制度の裏にある現実的な苦境にも目を向けるようになっています。
さらに驚くのは、この作品にはプロの脚本家がいないという点です。配車サービスのドライバーや子育て中の母親たちがAIを活用して制作コストを抑え、何千何万もの兵士が登場する壮大な場面まで自分たちの手で作り上げています。浮いた費用はすべて骨太なストーリーづくりに投入。再生回数66億回超という驚異的な数字をはじきだしています。
中国の4千年の歴史を背景に、技術の進歩によって無名の作り手が成功をつかむことができる、まさにサクセスストーリーです。
三石


















