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知らない間に輸入増値税を詐取されていませんか?

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2017年10月18日

キャストコンサルティング(上海)有限公司
  税理士 永野 弘子

    2017年2月20日に国家税務総局弁公庁により「税関輸入増値税控除管理の強化に関する国家税務総局の公告」に関する解読」という文書が発布され、この公告発布の背景については次のとおり記載されています。

 1、 この公告の発布の背景は、何か?
  近年、不法分子が不法に取得した税関輸入増値税専用納付書を利用して増値税を騙取する事件がしばしば発生し、輸入増値税徴収管理の秩序を重大に脅かしている。納税者の適法な権益を保護し、増値税の管理をより一層強化し、かつ、税関納付書を利用した税金騙取に係る犯罪活動に打撃を加えるため、税務総局は、税関納付書の検査照合の級別を全面的に引き上げ、税関輸入増値税に対する控除管理を強化することを決定した。

    自社が税関に納付した輸入増値税がまったくの赤の他人の会社で仕入税額控除に使われてしまい、自社での仕入税額控除ができない、即ち、自分のあずかり知らぬところで、輸入増値税が詐取されているというケースが多発したことがこの公告発布の背景です。

 なぜ、そのようなことが起こりえるのでしょうか?

   輸入増値税は税関で納付したのちに、税務機関での検査照合を経て一致した場合に限り仕入税額控除可となります。この税務機関への検査照合過程で、まったくの赤の他人があたかも自分が納付した輸入増値税として申告してしまえば、税務機関の監査照合を潜り抜けて仕入税額控除を行えることになります。
 では、自分のところに輸入増値税納付書原本があるのに、なぜ他人がその輸入増値税を使えるのでしょうか?
   2017年1月末までは、輸入増値税納付書のデータを増値税税務申告システムに入力するときに、税関納付書番号、日付、税額の三項目を入力し、その入力内容が税関データと一致した場合には仕入税額控除できていました。つまり、会社名を入力する必要がなかったため、簡単に全くの関係のない第三者でも他人の納付書データを盗用して、輸入増値税を仕入税額控除できていたのです。
 なお、このような輸入増値税納付書の盗用が問題となったことから、冒頭の公告が発布され、対策の一つとして、増値税情報の盗用を防止するために2017年の2月からは「会社名」のデータ入力も必要になっています。

   輸入増値税納付書データを誰かが横流ししたのは確かですが、その横流しされた輸入増値税納付書データを使って仕入税額控除しているのは華南(広東省)が最も多かったようです。
   また、輸入増値税を盗用した企業は、もともと増値税インボイスを使って一儲けしようという輩によって設立された企業がほとんどのようです。
   中国で暮らしていると、たぶんほとんどの人が全く知らない電話番号から携帯に電話がかかってきて「インボイス要らないか?」と言われたことがあると思いますが、このように増値税インボイスそのものを販売する場合、それが本物の増値税インボイスであるならば、その企業は国に発行した増値税インボイス分の増値税を納税しなければなりません。
   ただし、折角、増値税インボイスを販売しても税金を納税していたら何の利益もでないことになります。そこでこのような詐欺企業が考えるのは、納税額を減らすために「仕入税額控除」できる増値税をどこからかもってこようということです。
   そのために狙われたのが「輸入増値税」です。

 このような詐欺会社は、目的が増値税インボイスの不正販売にありますから、会社設立から短期間のサイクルで活動し、そのまま夜逃げ状態となっています。また、会社設立時に提出する身分証明書等も他人又は偽造のものを使っているケースがほとんどでその足取りはつかめないのが現状のようです。


 輸入増値税納付書を盗用の被害は内資企業に限らず、日系企業にも及んでいます。特に多額の原材料等を輸入する企業については、仕入税額控除できない輸入増値税がないかを確認されることをお勧めします。
 もし、仕入税額控除ができていない輸入増値税が見つかった場合には、管轄税務局へ報告のうえ、対策を協議すべきです(粘り強い交渉が必要となると思われます)。

 

以上




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