中国語の第三声
キャストコンサルティング(上海)有限公司 総経理 前川晃廣
(中小企業診断士/証券アナリスト)
キャストグループは、法務・労務・会計・税務・税関・マーケティングなど中国ビジネスの総合コンサルティングファームであり、中国語学校ではないのですが、駐在員の皆さまからのご質問の中に、中国語学習に関するお問合せをいただくことが、たまにあります。
中国語には、ご存知のように四声(しせい)があり、日本語にはないこの音の上がり下がりに、日本人はみな苦労します。特に難しいのが「v」で表記される第三声で、初学者は首を振りながら練習して克服します。
この第三声は、テキストに「後に第三声が続くと第二声に変化し、後にその他が続くと半三声に変化する」と書いてあるので厄介です。では、後に軽声が続くとどうなるのでしょうか?
①「あね」を表す「姐姐」の2文字目の「姐」は軽声で、②「どこ」を表す「ロ那里」の「里」も軽声です。しかし、①「姐姐」の1文字目の「姐」は半三声で発音しますが、②「ロ那里」の「ロ那」は第二声で発音します(実際に発音してみてください)。なぜ、このような違いが起こるのでしょうか?
①の「姐姐」型の仲間としては、「餃子」「耳朶」「椅子」などが挙げられます。これらに共通するのは、書き言葉としては1文字目だけでも意味を表現できるが、話し言葉としては2文字目がないと判別できない点です。言い換えると「2文字目は、なければ単語として成立しないが、独自の意味は持たないオマケである」ということです。よって2文字目は、第三声ではなく第三声以外(としての軽声)と認識され、1文字目が半三声に変化するのです。
②の「ロ那里」型の仲間としては、「老虎」「想想」「打掃」などが挙げられます。これらは、1文字目だけでは意味が伝わらず、2文字目があって初めて単語としての意味をもつ点が共通しています。「2文字目は、意味を持つ文字であり、オマケではない」のです。よって2文字目は、軽声で発音するものの意味を持つ1つの文字と認識され、あたかも第三声が残っているかの如く、1文字目が第二声に変化するのです。
もちろん、中国人がこんなヤヤコシイことを日々考えつつ中国語をしゃべっているわけではありません。しかし外国語としての中国語を正面から学ぶには、このようなメンドウな考え方にも一度立ち止まって耳を傾けることをお勧めします。そして四声に慣れてしまえば、こんな理屈は忘れ去りましょう。その段階まで来れば、初級は卒業です。
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