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~「仕組み」と「人」と「場」をつくる~人事と組織のマネジメントーー第45回 人前で大声で叱ってしまいがちな日本人

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2012年09月18日

株式会社 J&G HRアドバイザリー
代表取締役社長 篠崎正芳
 

 海外拠点において、日本人が期待するとおりに現地社員が考えて行動してくれる状態を作ることは大変難しいです。日本人のように同調してくれる、あるいは、あまり深く考えずに適合してくれるような従順な現地社員はほとんどいないのです。

 現地社員に期待すること、学んでもらいたいことは、都度、適切な言葉で丁寧にわかりやすく説明し、正しく理解してもらわなければいけません。通常、現地社員の理解がすすまないのは、現地社員の能力が低いというよりも、現地社員が日本人と同じようなバックグラウンドをもっていないことが大きな原因です。ですから、期待を伝える日本人が、相手が日本人の場合と比べて、より具体的に、より論理的に、そして、より時間をかけて丁寧に説明しなければ、現地社員は日本人から期待されている内容を正しく理解することができないのです。

 しかし、この点、日本人は本能的に「面倒くさい!」と感じてしまいます。でも、「それではいけない!」と気持ちを切り替えて説明を始めると、丁寧に説明する経験が少ないため、なんと、説明を重ねる過程で自分の「語彙(=ボキャブラリー)」を早々と使い果たしてしまい、最後は、説明に必要な「適切な言葉」を自分の中で見つけることができなくなってしまうのです!

 現地社員が同じ失敗を繰り返しているのを見て指導しようとしたときに「適切な言葉」が見つからなくなってしまうと、どのようなことが起きるでしょうか?無意識のうちにイライラ感が大きくなり感情的になってしまい、「こんなこともわからんのか!」「なんど言ったらわかるんだ!」「いいかげんにしろ!」というような表現で語気を荒げてしまうことになるのです。さらに、感情が抑えられなくなると、「アホ」「バカ」という言葉も混じってしまいます。しかも、周囲に他の社員がいてもお構いなく「叫んで」しまうのです。叫んでいる本人は「後でフォローすればよい」と思っているかもしれませんが、現実は、「感情的な人」というネガティブな印象を相手の現地社員だけでなく周囲の人にも強く与えることになり、リカバリーは大変難しくなるのが海外での実情です。

 「人前で叱られることで恥をかかせ、二度と恥をかきたくない気持ちにさせる」「周囲の人への戒めや警告の意味を込めている」ことから、過去、日本の企業社会では、「人前で大声で叱る」行動はある程度受け入れられてきた歴史がありますが、今の時代は日本でも好ましくないでしょう。

 海外は日本と違って「個人」に立脚した社会です。ですから、個人の「尊厳(=プライドや面子)」は日本人の想像を超えて大切にされています。この個人の「尊厳」が傷つけられることはひとりの人間にとって一大事なのです。場合によっては「パワハラ」と受け止められてしまうことにもつながるのです。

 では、このような深刻な事態を招かないために日本人はどうすればよいのでしょう?王道のテクニックは、「人前ではなく1対1の環境で叱る」ことになります。確かに、場所を会議室に移し1対1の環境に身をおけば、多少は冷静になることができると思います。しかし、「適切な言葉」が見つからなければ、結局は個室で「叫んで」しまい、指導したい「内容」を正しく理解してもらうことは困難になります。

 人前であろうと1対1の環境であろうと、「感情的」にならないためには、「内容」を伝えるための「適切な言葉」を見つけることが鍵になるのです。「現地社員は日本人と同じバックグラウンドがないので正しく理解できなくて当然」という前提に立ち、日本人は自分にとって当たり前ないろんなことを丁寧に説明する習慣を身につけることが大切です。実は、この習慣こそが「人前で大声で叱る行動」を自分の中から取り除くための本質的な解決策なのです!

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