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「無固定期間労働契約のインパクトと解決策」vol.7 労務派遣を活用し、直接労働契約を締結するのを回避する方法の内容及びその限界について

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2007年08月17日

弁護士法人キャスト糸賀
弁護士 村 尾 龍 雄


■Q7 労務派遣を活用し、直接労働契約を締結するのを回避する方法の内容及びその限界について教えてください。

■A 労務派遣を活用する方法は、雇用単位が直接労働契約を締結することを回避することにより、連続10年勤務ルール及び固定期間労働契約の2回連続締結するルールによる無固定期間労働契約化を回避することを目的とするものです。これについて解説しましょう。

 まず、連続10年勤務ルールに関する労働契約法第14条第2項第1号は、無固定期間労働契約化の要件として「労働者が当該雇用単位において連続して勤続10年以上であるとき。」と規定します。ここにいう「労働者」に被派遣労働者も含まれると解すれば、派遣先において物理的に連続して勤続10年に達した段階で、被派遣労働者「が労働契約の・・・締結を提起・・・する場合」には、無固定期間労働契約化するのではないか、との懸念があります。しかし、労務派遣を活用する場合、同法第58条第1項第1文が「労務派遣単位は、この法律にいう雇用単位であり、雇用単位の労働者に対する義務を履行しなければならない。」と規定していることにより、労務派遣単位(派遣元)こそが被派遣労働者の「雇用単位(中国語で「用人単位」)」であり、同法第59条第1項第1文の「 労務派遣単位の労働者派遣は、労務派遣形式による労働者使用を受け入れる単位(以下「労働者使用単位」という。)と労務派遣合意を締結しなければならない。」との規定により、労働者使用単位(中国語で「用工単位」。派遣先)と法的に位置付けられる派遣先において無固定期間労働契約化が義務付けられることはない、と考えられます。【13】

 次に、固定期間労働契約の2回連続締結ルールに関する労働契約法第14条第2項第3号は、無固定期間労働契約化の要件として「2回の固定期間労働契約を連続して締結し、かつ、労働者に第39条並びに第40条第(1)号及び第(2)号所定の事由のない場合において、労働契約を更新するとき。」と規定します。労務派遣を活用する場合、労働者使用単位(派遣先)が被派遣労働者と「2回の固定期間労働契約を連続して締結」することはありませんので、無固定期間労働契約が義務付けられることはない、と考えられます。

 以上より、労務派遣の活用は、無固定期間労働契約化を回避する法的効果を有するものと考えられます。

 もっとも、労務派遣の活用には、次の3つの限界があります。

 1、労務派遣単位のコンプライアンス維持の意識、体制との関係

 労働契約法第92条は、労務派遣単位が違法行為を行った場合について、「 労務派遣単位がこの法律の規定に違反した場合には、労働行政部門その他の関係主管部門が是正を命ずる。事案が重大である場合には、1名につき1千元以上5千元以下の標準により罰金を科し、かつ、工商行政管理部門が営業許可証を取り消す。」と規定するほか、「被派遣労働者に損害をもたらした場合には、労務派遣単位及び労働者使用単位は、連帯賠償責任を負う。」と規定し、被派遣労働者に対する派遣元(労務派遣単位)と派遣先(労働者使用単位)の連帯賠償責任を明確化しました。

 労働契約法第58条第1項は「労務派遣単位は、この法律にいう雇用単位であり、雇用単位の労働者に対する義務を履行しなければならない。」と規定する一方で、同法第62条は「労働者使用単位は、次に掲げる義務を履行しなければならない。」と規定し、「(1) 国の労働標準を執行し、相応する労働条件及び労働保護を提供すること。」、「(2) 被派遣労働者の業務要求及び労働報酬を告知すること。」、「(3) 時間外労働手当及び業績効果奨励金を支払い、業務職位と関連する福利待遇を提供すること。」、「(4) 職位にある被派遣労働者に対し業務職位に必要とされる養成・訓練をすること。」、「(5) 連続して労働者を使用する場合には、正常な賃金調整メカニズムを実行すること。」といった法的義務を課しており、被派遣労働者に対して労務派遣単位及び労働者使用単位が共同責任を果たす仕組みがとられています。この構造ゆえに、同法第64条も「被派遣労働者は、労務派遣単位又は労働者使用単位において法により労働組合に参加し、又はこれを組織し、自身の適法な権益を維持・保護する権利を有する。」と規定し、被派遣労働者に派遣元(労務派遣単位)、派遣先(労働者使用単位)のいずれかを選択して労働組合に参加し、またこれを設立する権利を認めたと思われます。

 このように労働契約法は、従前、法律レベルで規定が存在しなかった労務派遣について、同法第57条乃至第67条で初めて法律レベルにおける規制を置いたと同時に、その構造について、派遣先(労働者使用単位)が被派遣労働者に対する全てのリスクを派遣元(労務派遣単位)に移転することを許さず、被派遣労働者に対する共同責任を負担させて、当該リスクを共有させることで、被派遣労働者の権利保護を図ろうとしている点が明確に理解されなければなりません。

 換言すれば、今後は労務派遣の2つの要素、すなわち人材派遣と労働力派遣のいずれについても、コンプライアンス維持に対する意識、体制を有しないいい加減な労務派遣単位を選択すれば、その違法行為の全責任が即、派遣先(労働者使用単位)に降りかかることになるのです。

 こうして、今後、人材派遣と労働力派遣について、適切な労務派遣単位を自社の所在地において発見することができるかが重要になると同時に、被派遣労働者に対して共同責任を負担することはやむを得ないとしても、内部的な責任分担をどうするかを労務派遣契約で明確に決めておくことこそが事後的な求償権行使のために必要不可欠の要素となることが認識されなければなりません。

 2、2年以上の固定期間労働契約の締結の強制ルールとの関係

 (1)2年以上の固定期間労働契約の締結の強制ルールとの関係

 労働契約法第58条第2項は「労務派遣単位は、被派遣労働者と2年以上の固定期間労働契約を締結し、月ごとに労働報酬を支払わなければならない。被派遣労働者に業務のない期間において、労務派遣単位は、所在地の人民政府所定の最低賃金標準に従い、当該者に月ごとに報酬を支払わなければならない。」と規定し、労務派遣単位に被派遣労働者と2年以上の固定期間労働契約の締結を義務付けています。この趣旨について、「中華人民共和国労働契約法釈義」(全国人民代表大会常務委員会法制工作委員会編)214乃至216ページは次の通り解説しています。

 「労務派遣単位は、被派遣労働者と少なくとも2年以上の固定期間の労働契約を締結することを要する。労働契約の期間は、本来、労働契約の双方当事者が約定しなければならない。固定期間の労働契約でもよく、無固定期間の労働契約でもよく、又は一定の業務完了を期間とする労働契約であってもよい。固定期間の労働契約については、双方が期間を約定することもできる。但し、この法律では、労務派遣における労働契約期間について強制的な規定を設けており、すなわち2年を下回ってはならず、2年を上回ってもよい。実際の業務において、一部の労務派遣単位は、雇用単位の責任を免れるために故意に労働契約において具体的な契約期間を約定せず、労務派遣単位と受入単位とが締結する労務派遣合意において約定する業務期間又は労務派遣労働者が受入単位のために労働を提供する実際の期間を基準として規定している。労務派遣合意においてその期間を1年と約定したときは労働契約の期間も1年となり、労務派遣労働者の受入単位における労働の提供が事前に終了するときは労働契約も同時に終了することとなる。この点について一部の同志は、労務派遣単位は仲介ではなく、労務派遣労働者は労務派遣単位の正式な従業員であり、労務派遣単位は雇用単位として相応する責任を負わなければならないと建議し、労働契約においてその期間を明確に約定し、かつ、当該期間は労務派遣合意において約定される期間を下回ってはならないとすることを建議した。この問題を解決するために、この条項では、労務派遣単位は、労働者と2年以上の固定期間労働契約を締結しなければならないと規定している。この規定に対し、意見聴取の過程において、ある労務派遣単位は、実践において受入単位の労働者使用期間を労務派遣契約の期間とする方法は確かに適切でないにもかかわらず、この条項で労務派遣単位と労働者とが締結する契約を労働契約と規定する一方で、労働契約法には通常の労働契約について最低期間を設定する規定がなく、労務派遣契約についてのみ最低期間を2年として規定するのは、必ず法律の不一致をもたらし、また労務派遣単位の負担を重くして、不公平をもたらすとした。ある雇用単位は、労務派遣単位は最低期間を2年とする負担を多かれ少なかれ雇用単位に転嫁するに違いなく、雇用単位のコストが大きく引き上げられることになり、就業に不利であると主張した。また、労務派遣契約の最低期間を2年にすると、労務派遣は臨時的、補助的かつ代替的な業務職位において実施するという規定に矛盾することになるという主張もあった。繰り返し検討を重ねて考慮した結果、我々は、次のとおり判断した。すなわち、労務派遣において雇用単位が故意に労働契約に具体的な契約期間を約定せず、労務派遣単位と受入単位とが締結する労務派遣合意において約定する業務期間又は労務派遣労働者が受入単位のために労働を提供する実際の期間を基準とするよう規定し、労務派遣労働者が受入単位における労働の提供を事前に終了するときは労働契約も同時に終了するという事態を途絶させるためには、法律が労務派遣の労働契約期間に対し最低期間の規定を設けることは必要であり、これは労働契約期間に係る問題を解決するのみならず、同時に労働者が業務のない期間にあるときは、労務派遣単位が労務派遣単位の所在地の人民政府の規定する最低賃金標準を下回らない労働報酬を支払うことを要することも規定する。これは、労務派遣という労働者使用の形態の不正常な発展を制限する有効な経済手段の一つでもある。」

 以上の記述からすれば、労務派遣単位が被派遣労働者と締結する労働契約は、必ず2年以上の固定期間労働契約であることを要し、仮に2年以上の固定期間労働契約を2回連続して締結し、更新するとしても、労務派遣単位において無固定期間労働契約化することはなく、常時、2年以上の固定期間労働契約を締結することが義務付けられていると理解することができます。【14】

 とすると、労務派遣単位は、2年以上の固定期間において「被派遣労働者に業務のない期間」が生じ、その結果、「労務派遣単位は、所在地の人民政府所定の最低賃金標準に従い、当該者に月ごとに報酬を支払わなければならない。」との法的義務が働くことを回避するために、一方で固定期間を最短の2年間とすると共に、他方で労働者使用単位(派遣先)に対して、労務派遣契約の期間を2年間とし、当該期間中に労働者に労働契約法第39条、第40条第1号、第2号の規定する解雇事由のない限り、労務派遣契約を解除できない旨の条件設定を受諾するように要求するものと思われます。

 こうして、従前の1年に1回雇止めの機会のある固定期間労働契約中心の雇用文化は、今後、2年に1回雇止めの機会のある労務派遣契約中心の雇用文化に移行する可能性があり、当該期間の短縮を図ることは不可能である点に労務派遣の活用の限界があるといえます。

 (2)従前の労務派遣を活用した繁忙期における人員調整策の終焉の可能性

 家電をはじめとする完成品メーカーの場合【15】、春節、労働節、国慶節といった三大休暇やクリスマス商戦と関係する生産時期は必ず繁忙期となり、固定的な労働者だけでは生産を実施するのに不足するため、労務工(又は季節工、臨時工)と呼ばれる流動的な労働者を労務工派遣の形式で確保する例が多々あります。こうした労務工は数ヶ月の雇用だけで不要となり、15日程度の事前通知を労務工派遣会社宛、行うだけで、何時でも雇用調整ができるとされてきたのです。

 しかし、今後、こうした労務工派遣を各地の労務工派遣会社に依頼する場合に、同社が確実に2年以上の固定期間労働契約の待遇を労務工に付与しているか否かなど、法令遵守を確認しなければなりません。いい加減な労務工派遣会社を利用して、ここが労働契約法施行後も、2年以上の固定期間労働契約の待遇を付与せず、派遣先からの事前通知期間満了と同時に労働契約を終了するなどの違法行為を実施すれば、労働契約法第92条により連帯賠償責任を負担するリスクが生じることになります(その場合、各被派遣労働者について、2年から実際稼動期間を控除した期間の最低賃金相当額が連帯賠償責任の最低限を画することになると思われるところ、被派遣労働者数が多数になればなるほど、最低限の賠償額だけでも巨額になる懸念があります)。

 こうした観点から、法令遵守の確認をすれば、労務工に関して適法な労務派遣の実施を行うことができる労務工派遣会社はほとんどなくなる可能性があります。なぜなら、労務工はその性質上、1年未満の繁忙期に限定して雇用調整を図るための存在であり、2年以上の固定期間労働契約の保証には本来的に馴染まないことから、当該保証を遵守して、派遣先から切られた後も、固定期間が2年に達するまで、最低賃金保証をするか(これは経済的に不可能でしょう)、確実に他の派遣先をアレンジできる能力を有する労務工派遣会社は現在のところ存在しないと思われるからです。

 とすると、労務工による雇用調整は今後2つの方向で解消を図るほかないと思われます。

 第1の方向は、コンプライアンス維持に対する意識、体制を有し、かつ、労務工に2年以上の固定期間労働契約の保証を付与しながら、短期的な雇用調整を希望するメーカーの要求に対応できる、すなわち短期間の事前通知期間中に他の派遣先を確実に探索することができるルートを持つ労務工派遣会社が登場することを前提として、ここに労務工派遣を依頼するというものです。しかし、このアプローチは、そのような労務工派遣会社が現在のところ存在していないと思われることから、果たして今後登場するのかが問題となり、確実性を欠く憾みがあります。

 第2の方向は、労務工を直接雇用に切り替えることです。すなわち、労務工の予定稼動期間相当の固定期間労働契約を締結し、仮にこれを延長することがあったとしても、2回の連続した固定期間労働契約の締結で打ち止めとし、決して3回目に突入しないとするものです。稼動する業務内容が明確に特定できる場合は、一定の業務任務の完了を期間とする労働契約を締結することで対応することも検討対象となります。もっとも、この選択肢について、例えば固定期間労働契約を締結する場合には、従前と比べて、ただでさえ雇止めに関する経済補償金負担がコスト増加要因となるほか【16】、保守的観点より予定稼動期間を実際よりやや長めに設定するとすれば、それもまたコスト増加要因となり、労務工を利用した雇用調整について、ダブルのコスト増加を覚悟しなければならなくなります。

 このように労務工派遣問題について、労務派遣がベストのソリューションにはならないという点に、労務派遣の活用の限界を見ることができます。

 3、労務派遣の活用が可能な業務職位との関係

 労働契約法第66条は「労務派遣は、一般に、臨時的、補助的又は代替的な業務職位において実施する。」と規定しており、労務派遣の活用が可能な業務職位を制限しています。これは労務派遣の活用の1つの限界を隠します。

 その趣旨について、「労働契約法釈義」228、229ページは次の通り説明しています。

 「この条項は、労務派遣が適用される職位範囲に関する規定である。

 我が国の法律が労務派遣に対し規範及び制限を有していなかったことから、雇用単位は、労働者使用コストを引き下げ、労働法の責任を回避するために、自由に労務派遣労働者を使用したことから、労務派遣の範囲が不断に拡大し、派遣労働者の人数も不断に増加することとなった。ある業種及び企業の中には、労務派遣労働者が半数以上を占め、労働者使用形態の主流となっているところもある。長期間かつ安定的に需要のある業務職位においても、労務派遣労働者が使用されており、例えば銀行の窓口職員等である。これらの労働者使用の形態を規範化しなければ、その発展にまかせ、労務派遣は近いうちに全ての企業の労働者使用の常態になる可能性があり、労働関係の基礎は、重大な挑戦を受けることとなり、労働者の適法な権益は得るべき保障を得られなくなり、社会的公平の維持及び実現も困難になる。このため、労働契約法は、労務派遣は、一般に、臨時的、補助的又は代替的な業務単位にのみ適用することを明確に規定し、もって労務派遣という種類の労働者使用形態が日増しに拡大している現象を解決することを意図している。

 外国及び地域の幾つかの規定を見ると、大多数の国は、労務派遣の初期においていずれも厳格な管制を実行し、業務職位に対しても一定の制限を設けている。日本は、1985年に制定した「労働者派遣法」において、労務派遣につきある種の業種領域、例えば港湾運送業等の業務に従事することを禁止することにつき明確に規定している。我が国の台湾地域の「派遣労働法」も、業種を区分して労務派遣の範囲を限定している。「フランス労働法典」は、労働区分を経常的労働と臨時的労働に分け、労務派遣の範囲を法律において明確に規定する臨時的労働範囲に限定している。ペルーは、フランスと同様に、労務派遣を臨時的業務の範囲に限定している。一部の同志は、労務派遣は、現在、世界中の労働者使用において発展しており、我が国の労働契約法でこれについて厳しく管制すべきではないと主張した。国外の状況を見ると、いくつかの先進国家においては、労務派遣に対して管制から徐々に開放していく過程をたどっている。労務派遣というこの種の労働者使用の形態は、我が国においては始まったばかりであり、経験がなく、幾つかの問題が発生している。したがって、この法で労務派遣に対して幾つかの制限的な規定を設けたものである。人材市場のメカニズムが徐々に健全化するに伴い、労務派遣という労働者使用形態もその特有の作用を発揮し、徐々に発展するであろう。

 この条項は、原則的に労務派遣の職位の適用範囲を規定しており、臨時的、補助的又は代替的な業務職位を含む。具体的な業務単位については、国務院の労働行政部門がこれを制定し、又は関係部門と共同して制定することができる。」

 以上の通り、労働契約法第66条は労務派遣中心主義の雇用文化の成立を阻止するための規定であることは明らかですが、労働契約法第三草案には存在した「具体的な業務職位は、国務院の労働行政部門が規定する。」という一文が削除されたことから、労働及び社会保障部の部門規則で臨時的、補助的、代替的な業務職位の具体的な意義、基準が明確にされるとは限らなくなりました。そこで、何が臨時的、補助的、代替的かはまず外商投資企業が経営自主権に基づき基準を作成することで足りると解され、後に労働契約法の要求でないにせよ、労働及び社会保障部が任意に部門規則を制定する場合は、当該基準が部門規則に抵触する限度でその是正を図ればよいということになると思われます。

 そうして見ると、当該部門規則が任意に制定されない限り、日常経営管理の頂点である総経理とその補佐を行う副総経理はさすがに非臨時的、非補助的、非代替的であるとしても、労務派遣の範囲を最大化することを希望する外商投資企業は、総経理、副総経理以外の全業務職位を臨時的、補助的、又は代替的であるとして、労務派遣の対象とする可能性があり、その場合にも、当該選択を労働契約法第66条違反であると断ずることはできないと思われます。

 したがって、上記部門規則が任意に制定されない限り、労務派遣の対象範囲をどこまでの業務職位とするかは、労働契約法の要求に基づくというよりも、日常の労務管理のあり方として、どのような人事組織設計とするのが労働者、特に幹部職員のモティベーションを高めることができるのか(総経理、副総経理以外は全員、被派遣労働者とする場合は、幹部職員のモティベーションに影響する可能性があると思われます)という観点から決定されるべき事柄であるということができるかもしれません。

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【13】労務派遣への移行段階で例えば連続勤務が9年6ヶ月になっているなど、10年まであと僅かの場合にも、連続10年勤務の要件を満たさない限り、無固定期間労働契約化はしないことになりますが、これに関して「中華人民共和国労働契約法解読」40ページは「雇用単位がこの規定を回避し、労働者が勤続9年半になる頃に、いろいろな手段を講じて勤続期間が10年に達することのないようにしながら、なお当該労働者を継続して使用するという状況を防止するために、具体的な法執行及び司法部門は、相応する補充規定を定めることができる。」と記載しており、今後、この問題は労働及び社会保障部の部門規則や最高人民法院の司法解釈により、調整される可能性があります。

【14】無固定期間労働契約化する場合、労務派遣単位が被派遣労働者と締結する労働契約で当初に派遣する派遣先(労働者使用単位)のみを唯一の派遣先とし、ここで失職したとしても、他の派遣先をアレンジしないことを明確に規定しておけば、労働契約法第40条第3号の規定する「労働契約締結の際に根拠とした客観的状況に重大な変化が生じ、労働契約を履行するすべをなくさせ、雇用単位と労働者との協議を経て、労働契約内容の変更につき合意に達することができないとき。」に該当するものとして、30日前の通知をすることにより、労働契約を解除することが可能になります。労働契約法第58条第2項は、無固定期間労働契約が被派遣労働者にとっては不利益に働き得るという特性に着眼して、被派遣労働者の雇用の長期化、安定化を図るために、2年以上の固定期間労働契約の常時締結義務を課したと理解することができます。

【15】プロモーション問題-労務派遣と業務処理請負(プロジェクト請負)の区別の明確化の要請
家電をはじめとする完成品メーカーは、商戦時期にはマーケティング会社に依頼し、商品のプロモーションを実施します。その具体的方法は、家電メーカーを例にとると、マーケティング会社が労働契約を締結する多数の労働者(プロモーター)を専売店や家電量販店の自社コーナーに派遣してもらい、家電メーカーの指揮命令のもとで、消費者に商品宣伝を行うというものです。優秀なプロモーターは、1つの家電量販店で成績が上がると、他の成績不良の家電量販店へと家電メーカーの指示で動くことも多々あります。こうしたプロモーションは、従前、労務派遣の一類型ではなく、マーケティング会社がプロモーションという1つのプロジェクトを請け負うものとして、「プロジェクト請負(中国語で項目承包)」と理解されてきました。これは日本でいえば、業務処理請負に相当します。ところで、今までは、労務派遣と業務処理請負の相違について、中国では論じる意義が余りありませんでした。概念的には前者は被派遣労働者は派遣先の指揮命令で動き、後者は派遣元に相当するマーケティング会社の指揮命令で動くと言っても、労務派遣について法的規制がなかったのですから、指揮命令を誰が実施しようが違法の問題を惹起すると認識されてこなかったからです。しかし、労働契約法により労務派遣について、例えば2年以上の固定期間労働契約の締結義務が派遣元(労務派遣単位)に課されるなどの新たな法的規制が登場すると、今までのように、労務派遣と業務処理請負の区別について、家電メーカーは無頓着であってはならないことになります。なぜなら、実態が労務派遣であるのに、マーケティング会社が労働契約法の潜脱行為を実施する場合、労働契約法の遵守を事後的に強制され、また同法第92条により連帯賠償責任を負担するリスクが生じるからです。今後、中国版「偽装請負」問題が取沙汰される前に、家電メーカーをはじめとする完成品メーカーは、これに関するコンプライアンス体制構築をどうするかについて、議論する必要があると思われます。

【16】労働契約法第46条本文は「次に掲げる事由の一がある場合には、雇用単位は、労働者に経済補償を支払わなければならない。」と規定し、同条第5号が「雇用単位が労働契約に約定する条件を維持し、又は引き上げて労働契約を更新し、労働者が更新に同意しない状況を除き、第44条第1号の規定により固定期間労働契約を終了するとき。」と規定したことにより(同法第44条本文は「次に掲げる事由の一がある場合には、労働契約は、終了する。」と規定し、同条第1号は「労働契約の期間が満了したとき。」と規定します)、使用者による雇止めは、経済補償金の支払事由となりました。

 
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