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「無固定期間労働契約のインパクトと解決策」vol.4 無固定期間労働契約の強制が働くのはどのような場合でしょうか。

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2007年08月17日

弁護士法人キャスト糸賀
弁護士 村 尾 龍 雄

■Q4 無固定期間労働契約の強制が働くのはどのような場合でしょうか。 

■A 労働契約法が無固定期間労働契約を強制する場合について、労働契約法第14条第2項は次の通り規定します。このうち、特に重要なところは下線部を付したところで、以下では当該箇所について解説します。

 第14条第2項 雇用単位と労働者とは、協議により合意したときは、無固定期間労働契約を締結することができる。次に掲げる事由の一があり、労働者が労働契約の更新若しくは締結を提起し、又はこれに同意する場合には、労働者が固定期間労働契約の締結を提起する場合を除き、無固定期間労働契約を締結しなければならない。
(1) 労働者が当該雇用単位において連続して勤続10年以上であるとき。
(2) 雇用単位が初めて労働契約制度を実行し、又は国有企業が制度改革により新たに労働契約を締結するときに、労働者が当該雇用単位において勤続10年以上であり、かつ、法定の退職年齢まで10年に満たないとき。
(3) 2回の固定期間労働契約を連続して締結し、かつ、労働者に第39条並びに第40条第1号及び第2号所定の事由のない場合において、労働契約を更新するとき。

1、無固定期間労働契約の法律要件(その1)-第14条第2項本文

 無固定期間労働契約を強制される要件は①乃至③の3つに分かれます。

 ①次に掲げる事由の一があり、②労働者が労働契約の更新若しくは締結を提起し、又はこれに同意する場合には、③労働者が固定期間労働契約の締結を提起する場合を除き、無固定期間労働契約を締結しなければならない。

 これをフローチャートにすると、次の通りです。

070816q401_1.gif

2、無固定期間労働契約の法律要件(その2)-労働契約法第14条第2項第1号

 ①の要件の1つである「労働者が当該雇用単位において連続して勤続10年以上であるとき。」について、この期間計算は労働契約法の施行前の期間を含みます。労働契約法第97条第1項第2文が「第14条第2項第3号所定の固定期間労働契約の連続締結に係る回数は、この法律の施行後に固定期間労働契約を更新したときから計算を開始する。」と規定しているところ、労働契約法第14条第2項第1号の計算開始について規定していないことより、文言として、そう理解することができます。

 この10年ルールについて、次の諸点に注意する必要があります。
 
 (1)労働法第20条第2項との相違点(重要)

 労働契約法第14条第2項第1号は労働法第20条第2項と一見そっくりな規定であり、これを再言したにすぎないかに見えますが、実際にその要件を精密に比較しますと、両者は似て非なるものであり、労働者に有利な変更がなされていることが理解できます。労働契約法第14条第2項本文、第1号との比較を容易にするために、①②③の番号を付します。

 「労働法」(全国人民代表大会常務委員会1994年7月5日公布、1995年1月1日施行)
第20条第2項 ①労働者が同一の雇用単位において連続して満10年以上勤務し、②当事者双方が労働契約を延長することに同意する場合において、③労働者が無固定期間の労働契約を締結する旨を提案するときは、無固定期間の労働契約を締結しなければならない。

 これについて、両者の要件に関する比較表を作成し、両者の異同を検討します。

   労働法第20条第2項  労働契約法第14条第2項本文、第1号

 ①

 労働者が同一の雇用単位において連続して満10年以上勤務し、  労働者が当該雇用単位において連続して勤続10年以上であるとき。

 ②

 当事者双方が労働契約を延長することに同意する場合において、  労働者が労働契約の更新若しくは締結を提起し、又はこれに同意する場合には、

 ③

 労働者が無固定期間の労働契約を締結する旨を提案するときは、  労働者が固定期間労働契約の締結を提起する場合を除き

  これを見ますと、①についてこそ同じであると評価できるものの、②について、労働法は10年経過後の更新の機会に当事者(労使)の合意を要求するのに対して、労働契約法は「労働者が(一方的に)労働契約の更新・・を提起・・する」だけで足り、使用者(会社)には拒絶できる権利を認めていないという大きな相違点があります。

 また、③について、労働法は労働者に無固定期間労働契約の締結を提案することを要求しますので、労働者が使用者による労働契約の更新拒絶をおそれ、10年経過後も当該要求をしない可能性がありますが、労働契約法は当該要求をする必要をなくし、「労働者が固定期間労働契約の締結を提起する場合」を除き、無固定期間労働契約となる旨を規定したという大きな相違点があります(労働者が自らに有利で、不利になることのない無固定期間労働契約の享受を拒否し、敢えて固定期間労働契約締結を提起する可能性は絶無に等しいと思われますので、③の要件はあってなきが如きものと思われます【7】)。

 ②③は使用者のコントロール外の事象ですから、労働契約法は同一の雇用単位において連続して勤続10年以上である場合、使用者に抗う術なく無固定期間労働契約となることを規定したと評価することができます。

 (労働契約法による新たなルール)

 労働契約法施行日である2008年1月1日以降に到来する固定期間満了日において連続10年勤務の要件を具備する労働者については、使用者に雇止めの権利はなく、労働者が一方的に更新を提起し、かつ、敢えて固定期間労働契約の締結を提起しない限り、固定期間満了日において無固定期間労働契約化する。

 (2)連続して勤続10年以上の計算に関する特殊なルール(重要)

 ここで注意をすべきは、10年の期間計算の基礎に2007年12月31日以前の期間を含むということのほか、中外合資経営企業及び中外合作経営企業において、中国側当事者から転籍出向した労働者がいる場合、当該労働者が中国側当事者において稼動していた期間を含むという点です。したがって、当該労働者の中国側当事者で稼動していた期間をX年、中外合資経営企業及び中外合作経営企業において稼動した期間をY年とすれば、X+Y≧10となった後の固定期間労働契約の更新時において、使用者に更新拒絶権は既になく、抗う術なく無固定期間労働契約となります。【8】

 その法的根拠は次の通りです。

 「労働部弁公庁の『外商投資企業労働管理規定』の貫徹の関係問題に関する回答レター」(労働部1995年7月14日発布・施行。労弁発〔1995〕163号)
第2条第6項 合弁、合作の中国側単位が合弁、合作企業の業務に手配された中国側従業員について、その連続稼動年数は、元の単位の稼動期間及び合弁、合作企業の稼動期間により合併計算する。
 当事者双方が労働契約の延長に同意したときに、従業員の連続稼動年数が満10年以上であり、かつ、無固定期間労働契約の締結を提起すれば、企業はこれと無固定期間労働契約を締結しなければならない。

 「『外商投資企業労働管理規定』の貫徹の関連問題に関する回答レター」中の連続勤務年数をいかに解釈するのかに関する労働部弁公庁の回答レター(労働部1996年3月8日発布・施行)
北京市労働局に回答する。
貴局の「『外商投資企業労働管理規定』の貫徹の関連問題に関する回答レター」中の連続勤務年数をいかに解釈するのかに関する回答申請」(京労関文[1996]12号)は、これを受領した。検討を経て、ここに書面により次のように回答する。
  我が部の「『外商投資企業労働管理規定』貫徹の関連問題に関する回答レター」(労弁発[1995]163号。以下「回答レター」という。)第2条第6号は、主として合資及び合作企業の特別な状況についてした規定である。合資及び合作企業を合資及び合作の中国側単位と同一の雇用単位とみなす旨を規定している。従業員が労働契約を継続締結する際に、その合資及び合作の中国側単位における連続勤務の期間は、合資及び合作企業において連続勤務する期間と合算しなければならない。したがって、「回答レター」中において言及される「連続勤務年数」は、「労働法」第20条の「同一の雇用単位において連続勤務する」の意義と同一である。

 (3)連続性の切断に関する解釈可能性

 労働契約法セミナーを2007年7月、8月上旬に各地で開催していますと、10年の連続性を切断するために、固定期間労働契約の更新時に、敢えて雇止めをし、その後1週間程度を経て固定期間労働契約を再度締結するというテクニックは有効か、という質問を複数回頂戴しました。しかし、これについて、次の法文に照らせば、違法無効と判断される可能性があると思われます(違法無効となった場合のペナルティについて、後述の4、参照)。また、こうした狡猾なテクニックを弄してまで無固定期間労働契約を回避しようとすれば、労働者の使用者への不信を惹起し、勤労意欲の低下、モラルハザードなどを招来することは確実であり、労務管理上も妥当な選択ではないと言わざるを得ません。

 「民法通則」(全国人民代表大会1986年4月12日公布、1987年1月1日施行)
第58条  次に掲げる民事行為は、無効とする。
(第1号乃至第6号省略)
(7)適法な形式をもって不法な目的を覆い隠したもの
2、無効な民事行為は、行為の始めから法的効力を有しない。

 3、無固定期間労働契約の法律要件(その3)-労働契約法第14条第2項第3号

 (1)労働契約法第14条第2項第3号の規定する法律要件

 労働契約法第14条第2項第3号について、3つの要件から成りますので、ここでは(a)乃至(c)を付して個別に考察します。

 「(a)2回の固定期間労働契約を連続して締結し、かつ、(b)労働者に第39条並びに第40条第1号及び第2号所定の事由のない場合において、(c)労働契約を更新するとき。」

 まず、(a)の2回の固定期間労働契約を連続して締結するという意味は読んで字の如くです。もっとも、固定期間労働契約の連続回数の計算について、労働契約法第97条第1項第2文が「第14条第2項第3号所定の固定期間労働契約の連続締結に係る回数は、この法律の施行後に固定期間労働契約を更新したときから計算を開始する。」と規定している通り、2008年1月1日以降の固定期間労働契約の更新後にカウントを開始するのであり、2007年12月31日以前のものを遡及的にカウントするものでないことに注意を要します。

 固定期間労働契約の連続締結に関して、使用者が連続性を切断するため、実際には連続雇用する意図を有しながら、中途で敢えて雇用しない短期間を挟むことで、連続性を切断することの可否が問題となるところ、これについては前述の通り、民法通則第58条第1項本文、第7号、第2項により、違法無効となる可能性がありますし、労務管理上も妥当ではありません。

 次に、(b)について、労働契約法第39条、第40条第1号、第2号【9】は各種解雇事由を規定するところ、解雇事由があるか否かは固定期間労働契約の固定期間中にこそ意味があるものの、期間満了時において無固定期間労働契約になるか否かを論じる労働契約法第14条第2項本文、第3号の適用が問題となる場合には無意味なものではないか、との批判があり得るところです。

 しかし、この点について、「中華人民共和国労働契約法解読」(全国人民代表大会常務委員会法制工作委員会行政法室編著)42ページは次の通り解説します。

 「本規定中に『労働者は本法第39条、第40条第1項、第2項所定の事由』という1つの条件がある。この条件について、かつて異なる認識があった。ある者は、労働者第39条、第40条第1項、第2項所定の事由がありさえすれば、雇用単位は労働契約を解除することができ、労働契約の更新を論ずるまでもなく、これによりこの条件は形骸化したもので、実質的な意義はない。研究を経て、異なる角度からこの条件を見ることができると考える。すなわち、法定解除事由を有する労働者について、この条件は確かに実質的な意義はなく、更新を待たずして、雇用単位は労働契約を解除することができる。しかし、規律に従い、法を守る労働者について言えば、稼動期間中において規律に従い、法を守り、稼動任務を良好に完遂すれば、自信を持って雇用単位に更新を要求することができ、雇用単位もまた当該労働者を継続使用しなければならなくなる。この条件は労働者の規律遵守、法令遵守、勤労を導くのに有利であり、雇用単位がこうした労働者を引き留めるのにも有利である。」

 最後に、(c)について、「労働契約を更新するとき」の主語が誰かが問題となるところ、契約の更新は通常、一方の契約当事者だけで実施できるものではなく、契約当事者双方が合意して初めてなし得るものであることに鑑みれば、契約当事者双方=労使であると理解することができます。これにより、(b)解雇事由のない限り、(a)2回の固定期間労働契約を連続して締結し、その後、(c)労使が労働契約を更新することを合意した場合に、労働契約法第14条第2項本文の規定する①の要件(「次に掲げる事由の一があり」)を具備するものと解されます。

 
 重要ポイント

 使用者の固定期間労働契約の更新拒絶権(雇止めの権利)の行使は、たった1回になる可能性がある!?(「1回限りの雇止めの機会」説と「2回の雇止めの機会」説の戦い)

 したがって、法文の素直な解釈からすれば、(c)に依拠して使用者に2回の更新拒絶権(雇止めの権利)が留保されることになるはずですが、「中華人民共和国労働契約法解読」は使用者の更新拒絶権は1回限りであると考えている節があることには注意を要します。以下に同書の気になる記述を抜粋します。

 「中華人民共和国労働契約法解読」
(a)41、42ページ
3. 2回の固定期間労働契約を連続して締結し、かつ、労働者に第39条並びに第40条第1号及び第2号所定の事由のない場合において、労働契約を更新するとき。
 この号の規定に基づくと、労働者が第39条並びに第40条第1号及び第2号所定の雇用単位が労働契約を解除することができる状況にない場合には、雇用単位と労働者とが1度固定期間労働契約を締結し、2回目に固定期間労働契約を締結した場合には、次回は、無固定期間労働契約を締結する可能性が高いことを意味している。
労働契約法制定の過程において、この規定は、比較的大きな論争を引き起こした。一部では、固定期間労働契約を2回連続して締結すれば、無固定期間労働契約を締結する必要があるとした場合には、労働関係の硬直化をもたらし、また、「鉄飯碗」【10】時代に逆戻りする可能性があるという意見があった。また、一部の雇用単位は、無固定期間労働契約の締結を回避するために、一部の技能が低く又は職位専門性の強くない労働者について固定期間労働契約を1回締結するだけとなり、かえって労働契約の短期化に係る問題を深刻にするという意見もあった。検討を経て、次の通りの認識が形成された。第一に、無固定期間労働契約は「鉄飯碗」ではなく、労働契約解除の法定事由が出現すれば、同様に解除することができること。第二に、我が国の労働契約の短期化問題は、主に雇用単位がその優勢な立場を乱用することによってもたらされたものであり、実践において多くの労働契約が短期化しているが、労働関係は長期化しているという状況が存在する。これは、雇用単位には正常かつ継続的に従業員を雇用する必要があり、しからざる場合には、企業の発展に不利となることを説明している。したがって、1回だけの短期の固定期間労働契約を締結することは、企業の利益には適合せず、この規定は直接に労働者の失業をもたらすことはない。反対に、労働単位が無固定期間労働契約の締結を回避しようとするならば、1回の比較的長期間の労働契約を締結する可能性があり、これは労働者にとって有利となる。
2、248、249ページ
第82条  雇用単位は、労働者使用の日から1か月を超え1年未満に労働者と書面による労働契約を締結しない場合には、労働者に毎月2倍の賃金を支払わなければならない。
 雇用単位がこの法律の規定に違反し労働者と無固定期間労働契約を締結しない場合には、無固定期間労働契約を締結すべき日から労働者に毎月2倍の賃金を支払う。
(中略)
二、雇用単位が本規定に違反し、労働者と無固定期間労働契約を締結しない場合
 本法の規定に基づけば、「労働契約は、固定期間労働契約、無固定期間労働契約及び一定の業務任務を完了することを期間とする労働契約に分かれる。」、「無固定期間労働契約とは、雇用単位と労働者が終了の時の確定のない旨を約定する労働契約をいう。」とされる。当面、わが国の労務就業市場において労働契約の短期化現象が生じ、労働関係の安定及び調和、収入分配制度及び従業員の関係する権益の実現について、いずれも消極的な影響を生じてきた。長期的観点から見れば、企業、労働者、政府について言えばいずれも不利であり、最終的に国民経済の持続、調整、安定、健康な発展に影響を与える。これにより、労働者の合法的権益を維持・保護し、労働関係の調和のとれた発展を促進するため、労働契約法において、労働契約の短期化を抑制する措置をとることは非常に必要なことである。本法第14条は無固定期間労働契約の締結について明確な規定を作成した。本条において「本法の規定に違反し、無固定期間労働契約を締結しない場合」とは、主として雇用単位が本法第14条第2項の規定に違反し、労働者と無固定期間労働契約を締結しない行為をいい、主として以下の三種の事由が含まれる。(一)労働契約を更新するときに、労働者が当該雇用単位において既に連続して勤務満10年以上であり、労働者が労働契約の更新を提起し、又は同意しているのに、雇用単位が無固定期間労働契約の締結を拒絶した場合、(二)雇用単位が最初に労働契約制度を実行し、又は国有企業改革で重ねて労働契約を締結し、労働者が当該雇用単位において連続して勤務満10年以上であり、かつ、法定退職年齢まで10年以内となった場合に、労働者が労働契約の更新を提起し、又は同意しているのに、雇用単位が無固定期間労働契約の締結を拒絶した場合、(三)連続して2回固定期間労働契約を締結した場合で、かつ、労働者に本法第39条及び第40条第1項、第2項所定の事由がなく、労働者が労働契約の更新を提起し、又は同意しているのに、雇用単位が無固定期間労働契約の締結を拒絶した場合である。

 上記太字下線部の記述だけではわかりにくいので補足しますと、使用者に2回の雇止めの機会があるという現在の一般的理解は、前述の通り、労働契約法第14条第2項第3号の「(a)2回の固定期間労働契約を連続して締結し、かつ、(b)労働者に第39条並びに第40条第1号及び第2号所定の事由のない場合において、(c)労働契約を更新するとき。」という文言のうち、(c)について、「労使が労働契約を更新するとき。」の意味に読むことを前提としています(その読み方は非常に素直な読み方である、と思います)。(a)乃至(c)の要件が全部揃って、初めて11ページのフローチャートに示す①の要件がクリアされるのですから、②に関する「労働者が労働契約の更新・・・を(一方的に)提起・・・する場合」という要件が問題となるのは、①の「(c)労使が労働契約を更新するとき。」が充足された後であるべきところ、①まず最初に労使が労働契約の更新を合意したのに、②「労働者が労働契約の更新・・・を(一方的に)提起・・・する」というのでは概念的に矛盾するので、これを合理的に解釈しようとすれば、固定期間労働契約を2回連続して締結した後に「(c)労使が労働契約を更新」することを合意し、そこで3回目の固定期間労働契約が締結され、その固定期間が満了する場合に「労働者が労働契約の更新・・・を(一方的に)提起・・・する」限り、使用者に抗う術なく無固定期間労働契約になる、と理解すべきように思われます。

 ところが、「中華人民共和国労働契約法解読」は、「連続して2回固定期間労働契約を締結した場合で、かつ、労働者に本法第39条及び第40条第1項、第2項所定の事由がなく、労働者が労働契約の更新を提起し、又は同意しているのに、雇用単位が無固定期間労働契約の締結を拒絶した場合」が違法であり、後述の労働契約法第82条第2項のペナルティの対象になるというのですから、①(c)の要件と②の要件を混同し(筆者は順序としてまず①(c)の要件充足を文言上、先に検討すべきであり、②の要件充足はその後に検討すべきものであると考えており、両者を競合させてはならないと考えています)、両者の競合の結果、②の要件を優先させて、①(c)の要件をなきものにするという解釈を行っているように見えるのです。

 繰り返しですが、現状において筆者は使用者に2回の更新拒絶権を認める解釈が法文の素直な読み方としては正しいと考えていますが、「中華人民共和国労働契約法解読」が全国人民代表大会常務委員会法制工作委員会行政法室の編著にかかる大変権威のある本であることに鑑みれば、そこで示された1回限りの雇止めの機会とする解釈可能性を無視する訳にはいきません。

 今後、この点については、労働及び社会保障部の部門規則や最高人民法院の司法解釈で一刻も早く明確な解釈が示されることが望まれますが、もし「1回限りの雇止めの機会」説が国家の正式な解釈として定着するならば、現在までの労働契約法第14条第2項第3号に関する一般的理解と異なり、しかもその解釈は使用者に極めて不利な内容になりますので、多くの使用者がパニックになる可能性すらあると考えます。

 今後、国家の正式な解釈の登場が注視されます。

4、無固定期間労働契約を締結しない場合のペナルティ-労働契約法第82条、第87条

 無固定期間労働契約を締結すべきであるのに、これを締結しない違法行為については、次の通り無固定期間労働契約を締結すべき日以後、2倍の賃金支給義務が科されます。当該違法行為が相当期間経過後、しかも多数の労働者について発覚した場合、同日に遡り再度当該労働者に既に支払った賃金と同額のペナルティを支払わされる結果になるのですから、場合により経営破たんの原因にもなりかねません。

 労働契約法第82条第2項 雇用単位がこの法律の規定に違反し労働者と無固定期間労働契約を締結しない場合には、無固定期間労働契約を締結すべき日から労働者に毎月2倍の賃金を支払う。

 また、無固定期間労働契約を締結すべきであるのに、これを締結せず、誤って固定期間労働契約を締結した結果、本来設けられるべきでなかった固定期間の満了を理由として、労働契約を終了した場合には、「この法律の規定に違反して労働契約を・・・終了する場合」に該当するものとして、通常の2倍の経済補償金を支払わされることになります。

 労働契約法第87条 雇用単位は、この法律の規定に違反して労働契約を解除し、又は終了する場合には、第47条所定の経済補償標準の2倍により労働者に賠償金を支払わなければならない。

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【7】使用者が労働者に不当な圧力をかけることにより、通常想定し難い固定期間労働契約締結の提起を促したとすれば、固定期間労働契約を無固定期間労働契約に変更する旨の請求により、事後的に無固定期間労働契約とされる可能性があります。

 「中華人民共和国契約法」(全国人民代表大会1999年3月15日公布、同年10月1日施行)
第54条第2項 当事者の一方が詐欺、強迫の手段を用い、又は他人の危急に乗じて、相手方を真実の意思に背かせる状況の下で締結させた契約について、損害を受けた者は、人民法院又は仲裁機関に対し、変更又は取消を請求する権利を有する。
【8】(重要)
 上海市に法定住所を有する中外合資経営企業及び中外合作経営企業について、1998年3月19日以後に中国側当事者から転籍出向した労働者について、X+Yの合算ルールの適用はありませんでした。
「上海市の外商投資企業の労働管理における幾つかの問題の処理意見に関する上海市労働局の通知」(上海市労働局1998年3月19日発布・施行。2003年2月8日廃止)
第1条  外商投資企業の中国側投資単位が従業員を推薦して外商投資企業において勤務させる場合には、契約制従業員流動弁法に従い、原単位が推薦される従業員と労働契約を解除し、規定に従い経済補償を支払い、かつ、退職手続をする。外商投資企業は、中国側投資単位の推薦する従業員を採用する場合には、法により労働契約を締結し、かつ、採用手続をしなければならない。推薦される従業員の同一雇用単位における連続勤務期間については、外商投資企業と労働関係を確立する日から起算する。中国側投資単位と外商投資企業とは、外商投資企業が中国側投資単位の推薦する従業員を採用することに係る労働関係問題については、法により関係する協議書を締結する場合には、協議書に従い処理する。
2、この意見施行以前に既に推薦され外商投資企業に入って勤務している全人民所有制及び都市・鎮集団所有制の中国側投資単位の原固定制従業員の同一の雇用単位における連続勤務期間については、原中国側投資単位における勤務期間と外商投資企業における勤務期間とを合算する。
 問題は上記法令が2003年2月8日に失効した後、上海市においてX+Yの合算ルールの適用はなおないことになるのか、中央法令に準拠し同日以降は合算ルールの適用を受けることになるのかにあります。この点について、上海市労働及び社会保障局にインタビューした結果によれば、上記法令の失効後も、「上海市労働契約条例」及びその関係法令(上記法令第1条に直接相当する条項はありません)により、中外合資経営企業、中外合作経営企業に中国側当事者から転籍出向する場合は、上記法令第1条の通り処理をすべきであり、上海市においてX+Yの合算ルールの適用はなおないことになる、とのことです。もっとも、中国側当事者が当該処理を怠った場合には、やはり中央法令に従って処理することになる可能性がある点には注意を要します。
【9】労働契約法
 第39条  労働者に次に掲げる事由の一がある場合には、雇用単位は、労働契約を解除することができる。
(1) 試用期間において採用条件に適合しないことが証明されたとき。
(2) 雇用単位の規則制度に重大に違反したとき。
(3) 職責を重大に失当し、私利を図り、雇用単位に重大な損害をもたらしたとき。
(4) 労働者が同時に他の雇用単位と労働関係を確立し、当該単位の業務任務の完了に重大な影響をもたらし、又は雇用単位の指摘を経て、是正を拒絶するとき。
(5) 第26条第1項第(1)号所定の事由に起因して労働契約が無効となったとき。
(6) 法により刑事責任を追及されたとき。
第40条  次に掲げる事由の一がある場合には、雇用単位は、30日前までに書面により労働者本人に通知し、又は労働者に1か月分の賃金を余分に支払った後に、労働契約を解除することができる。
(1) 労働者が病を患い、又は業務外の原因により負傷した場合において、所定の医療期間満了の後に原業務に従事することができず、また、雇用単位が別途手配した業務に従事することもできないとき。
(2) 労働者が業務に堪えることができず、養成・訓練又は業務職位の調整を経て、なお業務に堪えることができないとき。
【10】半永久的な保証のあること、又は食いはぐれのないこと

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