民間貸借事件を審理する際の法律適用にかかる若干の問題に関する最高人民法院の規定(改正前)
この規定は、法釈[2020]17号(2020年12月29日発布、2021年1月1日施行)により改正されている。
2015年8月6日法釈[2015]18号により公布、同年9月1日施行
2020年8月19日法釈[2020]6号により改正公布、同月20日施行
法釈[2020]6号
一、第1条を次のように改める。
「この規定において『民間貸借』とは、自然人、法人及び非法人組織の間において資金融通をする行為をいう。
金融監督管理部門の認可を経て設立された、貸付業務に従事する金融機構及びその分支機構に、貸付の実行等の関連する金融業務に起因して引き起こされた紛争には、この規定を適用しない。」
二、第2条を次のように改める。
「貸主は、人民法院に対し民間貸借訴訟を提起する際に、借用証、受領証、借用書等の債権証憑及び貸借にかかる法律関係の存在を証明することができるその他の証拠を提供しなければならない。
当事者が保有する借用証、受領証、借用書等の債権証憑に債権者が明記されていない場合において、債権証憑を保有する当事者が民間貸借訴訟を提起するときは、人民法院は、これを受理しなければならない。被告が原告の債権者としての資格について事実根拠を有する抗弁を提出し、人民法院が審査を経て原告が債権者としての資格を有しないと認めるときは、訴えを棄却する旨を裁定する。」
三、第3条を次のように改める。
「貸借双方が契約の履行地について約定せず、又は約定が明確でなく、事後に補充合意を達成せず、契約の関連条項又は取引習慣に従ってもなお確定することができない場合には、貨幣を受け取る一方の所在地を契約履行地とする。」
四、第5条を次にように改める。
「人民法院は、立件した後に、民間貸借行為自体が不法な資金募集等の犯罪の嫌疑にかかわることを発見した場合には、訴えを棄却する旨を裁定し、かつ、不法な資金募集等の犯罪の嫌疑にかかわる手がかり及び資料を公安又は検察機関に送致しなければならない。
公安又は検察機関が立件せず、若しくは立件・捜査した後に事件を取り消した場合、検察機関が不起訴の決定を下した場合、又は人民法院の効力を生じた判決を経て不法な資金募集等の犯罪を構成しないと認定された場合において、当事者が再度同一の事実により人民法院に対し訴えを提起するときは、人民法院は、これを受理しなければならない。」
五、第7条を次にように改める。
「民間貸借紛争の基本的な事件事実は、必ず刑事事件の審理結果を根拠としなければならず、当該刑事事件が審理を結了していない場合には、人民法院は、訴訟を中止する旨を裁定しなければならない。」
六、第9条を次のように改める。
「自然人間の借入契約に次に掲げる事由の1つがある場合には、契約が成立したものとみなすことができる。
(一)現金により支払う場合には、借主が借入金を収受した時
(二)銀行振替、ネット電子送金等の形式により支払う場合には、資金が借主の口座に到達した時
(三)手形・小切手により交付する場合には、借主が法により手形・小切手の権利を取得した時
(四)貸主が特定の資金口座の支配権を借主に授権する場合には、借主が当該口座に対する実際の支配権を取得した時
(五)貸主が借主と約定するその他の方式により貸付金を提供し、かつ、実際の履行が完了した時」
七、第11条を次のように改める。
「法人間、非法人組織間及びこれら相互間の、生産又は経営の必要のため締結した民間貸借契約については、「契約法」第52条及びこの規定第14条所定の事由が存在する場合を除き、当事者が民間貸借契約が有効であると主張する場合には、人民法院は、これを支持しなければならない。」
八、第12条を次にように改める。
「法人又は非法人組織が当該単位内部において借入れの形式を通じて従業員から資金を調達し、当該単位の生産又は経営に用い、かつ、「契約法」第52条及びこの規定第14条所定の事由が存在しない場合において、当事者が民間貸借契約が有効であると主張するときは、人民法院は、これを支持しなければならない。」
九、第13条を次にように改める。
「借主又は貸主の貸借行為が犯罪の嫌疑にかかわる場合、又は既に効力を生じた裁判により犯罪を構成すると認定された場合において、当事者が民事訴訟を提起するときも、民間貸借契約は、当然に無効とはならない。人民法院は、「契約法」第52条及びこの規定の次条の規定により、民間貸借契約の効力を認定しなければならない。
担保人が借主又は貸主の貸借行為が犯罪の嫌疑にかかわり、又は既に効力を生じた裁判により犯罪を構成すると認定されていることを理由として、民事責任を負わない旨を主張する場合には、人民法院は、民間貸借契約及び担保契約の効力並びに当事者の故意・過失の程度により、法により担保人の民事責任を確定しなければならない。」
十、第14条を次のように改める。
「次に掲げる事由の1つがある場合には、人民法院は、民間貸借契約が無効であると認定しなければならない。
(一)金融機構の貸付を不正に取得して転貸したとき。
(二)他の営利法人から貸借し、若しくは当該単位の従業員から資金を収集することにより、又は公衆から不法に預金を吸収する等の方式により取得した資金を転貸したとき。
(三)貸付実行資格を法どおりに取得していない貸主が、営利を目的として、社会の不特定の対象に対し貸付金を提供したとき。
(四)借主が借入金を違法犯罪活動に用いることを貸主が事前に知り、又は知るべきでありながら、なお貸付金を提供したとき。
(五)法律又は行政法規の強行規定に違反するとき。
(六)公序良俗に違背するとき。」
十一、第16条を次のように改める。
「原告が借用証、受領証、借用書等の債権証憑のみに依拠して民間貸借訴訟を提起し、被告が既に借入金を償還している旨を抗弁する場合には、被告は、自らの主張について証拠を提供して証明しなければならない。被告が相応する証拠を提供して自らの主張を証明した後、原告は、貸借関係の存続についてなお挙証責任を負わなければならない。
被告が貸借行為は実際に発生していないと抗弁し、かつ、合理的な説明をすることができる場合には、人民法院は、貸借金額、金銭の交付、当事者の経済能力、当該地又は当事者間の取引方式、取引慣習、当事者の財産変動状況及び証人の証言等の事実及び要素を考慮し、貸借の事実が発生したか否かを総合的に判断し、調査証明しなければならない。」
十二、第17条を次のように改める。
「原告が金融機構の振替証憑のみに依拠して民間貸借訴訟を提起し、被告が振替は双方の以前の借入金その他の債務の償還である旨を抗弁する場合には、被告は、自らの主張について証拠を提供して証明しなければならない。被告が相応する証拠を提供して自らの主張を証明した後、原告は、貸借関係の成立についてなお挙証責任を負わなければならない。」
十三、第18条を次のように改める。
「 「『民事訴訟法』の適用に関する最高人民法院の解釈」第174条第2項の規定により、挙証責任を負う原告が正当な理由なくして出廷を拒絶する場合において、審査を経て、現有の証拠によっては貸借行為、貸借金額、支払方式等の事件の主たる事実を確認するすべがないときは、人民法院は、原告の主張する事実について認定をしない。」
十四、第19条を次のように改める。
「人民法院は、民間貸借紛争事件を審理する際に次に掲げる事由の1つがあることを発見した場合には、貸借発生の原因、時、地点、金銭の源泉、交付方式、金銭の流れ及び貸借双方の関係、経済状況等の事実を厳格に審査し、虚偽の民事訴訟に該当するか否かを総合的に判断しなければならない。
(一)貸主が明らかに貸付能力を具備しないとき。
(二)貸主による訴えの提起の根拠となる事実及び理由が明らかに理にかなわないとき。
(三)貸主が債権証憑を提出することができず、又は提出した債権証憑に偽造の可能性が存在するとき。
(四)当事者双方が一定の期間内において民間貸借訴訟に複数回参加しているとき。
(五)当事者が正当な理由なくして出廷して訴訟に参加することを拒絶し、委託代理人による貸借事実に対する陳述が明確でなく、又は陳述の前後が矛盾しているとき。
(六)貸借事実の発生について当事者双方にいかなる争いもなく、又は弁明が明らかに理にかなわないとき。
(七)借主の配偶者又はパートナー若しくは事件外の者のその他の債権者が、事実根拠を有する異議を提起したとき。
(八)当事者にその他の紛争において財産を低価格により譲渡した状況が存在するとき。
(九)当事者が権利を不当に放棄したとき。
(十)虚偽の民間貸借訴訟が存在するおそれのあるその他の事由」
十五、第20条を次のように改める。
「究明を経て虚偽の民間貸借訴訟に該当し、原告が訴えの取下げを申し立てた場合には、人民法院は、これを許可しないものとし、かつ、「民事訴訟法」第112条の規定により、その請求を棄却する旨を判決しなければならない。
訴訟参与者その他の者が虚偽の訴訟を悪意により起こし、又はこれに参与した場合には、人民法院は、「民事訴訟法」第111条から第113条の規定により、法により罰金又は拘留を科さなければならない。犯罪を構成するときは、管轄権を有する司法機関に移送して刑事責任を追及させなければならない。
単位が虚偽の訴訟を悪意により起こし、又はこれに参与した場合には、人民法院は、当該単位に対し罰金を科するものとし、かつ、その主たる責任者又は直接責任人者に対し罰金又は拘留を科さなければならない。犯罪を構成するときは、管轄権を有する司法機関に移送して刑事責任を追及させなければならない。」
十六、第21条を次のように改める。
「他人が借用証、受領証、借用書等の債権証憑又は借入契約に署名し、又は押印したけれども、その保証人としての身分若しくは保証責任を負う旨を表明しておらず、又は他の事実を通じて当該他人が保証人であることを推定することができない場合において、貸主が当該他人に保証責任を負うよう請求するときは、人民法院は、これを支持しない。」
十七、第23条を次のように改める。
「法人の法定代表者又は非法人組織の責任者が単位の名により貸主と民間貸借契約を締結し、借り入れた金銭が法定代表者又は責任者が個人的に使用したものであることを証明する証拠がある場合において、貸主が法定代表者又は責任者を共同被告又は第三者に組み入れるよう請求するときは、人民法院は、これを許可しなければならない。
法人の法定代表者又は非法人組織の責任者が個人の名により貸主と民間貸借契約を締結し、借り入れた金銭を単位の生産経営に用いた場合において、貸主が単位及び個人に共同で責任を負うよう請求するときは、人民法院は、これを支持しなければならない。」
十八、第24条を次のように改める。
「当事者が締結した売買契約を民間貸借契約の担保とし、借入の期限到来後に借主が返済することができない場合において、貸主が売買契約を履行するよう請求するときは、人民法院は、民間貸借にかかる法律関係に従い審理しなければならない。当事者が法廷審理の状況に基づき訴訟上の請求を変更する場合には、人民法院は、許可しなければならない。
民間貸借にかかる法律関係に従い審理して下された判決が効力を生じた後、借主が効力を生じた判決により確定された金銭債務を履行しない場合には、貸主は、売買契約の目的物を競売し、もって債務の償還にあてるよう申し立てることができる。競売により得た代金と償還するべき借入金の元金・利息との間の差額について、借主又は貸主は、返還し、又は補償するよう主張する権利を有する。」
十九、第25条を次のように改める。
「貸借双方が利息を約定していない場合において、貸主が利息を支払うよう主張するときは、人民法院は、これを支持しない。
自然人間の貸借において利息についての約定が明らかでない場合において、貸主が利息を支払うよう主張するときは、人民法院は、これを支持しない。自然人間の貸借を除き、貸借双方において貸借利息についての約定が明らかでない場合において、貸主が利息を主張するときは、人民法院は、民間貸借契約の内容を考え合わせ、かつ、当該地又は当事者の取引方式、取引慣習、市場出し手レート等の要素に基づき利息を確定しなければならない。」
二十、第26条を次のように改める。
「貸主が借主に対し契約に約定した利率に従い利息を支払うよう請求する場合には、人民法院は、これを支持しなければならない。ただし、双方の約定した利率が契約成立時における1年物のローンプライムレートの4倍を超える場合を除く。
前項において『1年物のローンプライムレート』とは、中国人民銀行が全国銀行間コールセンターに授権して2019年8月20日から毎月発表させている1年物のローンプライムレートをいう。」
二十一、第28条を次のように改める。
「貸借双方が前期の借入金の元金・利息の決済後に、利息を後期の借入金元金に算入し、かつ、債権証憑を改めて発行する場合において、前期の利率が契約成立時における1年物のローンプライムレートの4倍を超えていないときは、改めて発行する債権証憑に明記された金額は、これを後期の借入金元金と認定することができる。超える部分の利息については、後期の借入金元金と認定しないものとする。
前項に従い計算し、借主が借入期間満了後に支払うべき元金及び利息の和が、最初の借入金元金と、最初の借入金元金を基数として、契約成立時における1年物のローンプライムレートの4倍より計算した借入期間全体における利息との和を超える場合には、人民法院は、これを支持しない。」
二十二、第29条を次のように改める。
「貸借双方に期限徒過にかかる利率について約定がある場合には、当該約定に従う。ただし、契約成立時における1年物のローンプライムレートの4倍を超えないことを限りとする。
期限徒過にかかる利率を約定しておらず、又は約定が不明である場合には、人民法院は、異なる状況を区別して処理することができる。
(一)借入期間内の利率を約定しておらず、また、期限徒過にかかる利率も約定していない場合において、期限を徒過して返済した日から借主が期限を徒過した返済にかかる違約責任を負うよう貸主が主張するときは、人民法院は、これを支持しなければならない。
(二)借入期間内の利率を約定しているけれども期限徒過にかかる利率を約定していない場合において、期限を徒過して返済した日から借入期間内の利率に従い借主が資金の占用期間の利息を支払うよう貸主が主張するときは、人民法院は、これを支持しなければならない。」
二十三、第30条を次のように改める。
「貸主と借主とが期限徒過にかかる利率を約定しており、また、違約金その他の費用についても約定している場合には、貸主は、期限徒過にかかる利息又は違約金その他の費用を主張することを選択することができ、また、一括して主張することもできる。ただし、総合計が契約成立時における1年物のローンプライムレートの4倍を超える部分について、人民法院は、これを支持しない。」
二十四、第31条を削除する。
二十五、第32条を第31条に改め、次のように改める。
「借主は、借入金を繰上償還することができる。ただし、当事者に別段の約定のある場合を除く。
借主が借入金を繰上償還し、かつ、実際の借入期間に従い利息を計算するよう主張する場合には、人民法院は、これを支持しなければならない。」
二十六、第33条を第32条に改め、次のように改める。
「この規定が施行された後において、人民法院が新たに受理する一審の民間貸借紛争事件には、この規定を適用する。
貸借行為が2019年8月20日より前に発生している場合には、原告が訴えを提起した時の、1年物のローンプライムレートの4倍を参照して、保護を受ける利率の上限を確定することができる。
この規定が施行された後において、最高人民法院が以前に出した関連する司法解釈とこの解釈とが一致しない場合には、この解釈を基準とする。」
民間貸借紛争事件を正しく審理するため、「民法通則」、「物権法」、「担保法」、「契約法」、「民事訴訟法」、「刑事訴訟法」等の関連法律の規定に基づき、裁判の実践を考え合わせ、この規定を制定する。
第1条 この規定において「民間貸借」とは、自然人、法人及び非法人組織の間において資金融通をする行為をいう。
金融監督管理部門の認可を経て設立された、貸付業務に従事する金融機構及びその分支機構に、貸付の実行...
・本資料の日訳文に関する著作権は弊社又は弊社に所属する作成者に属するものであり、本資料の無断引用、無断変更、転写又は複写は固くお断りいたします。
・また、本資料は、原文解釈のための参考に供するためにのみ、作成されたものであり、法令に対する解釈、説明及び解説等を含むものではありません。翻訳の正確性を含むがこれに限らない本資料に起因する問題について、弊社、弊グループ及び弊グループに属する個人は一切の責任を負いません。