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【ミニコラム 第125号】西貝の半調理品疑惑と信頼失墜

メールマガジン
2025年09月18日


 中国の人気外食チェーン「西貝莜麺村(中国西方料理がメイン)」が、高額なのに“半調理品”を使っているのではないか――そんな疑念から世論の渦中に立たされています。発端は、著名な起業家でネットの有力インフルエンサーである羅永浩氏が、一人あたり166元のセットに冷凍食材が使われていると疑義を呈し、とりわけ子供向けメニューの安全性と信用性に不安が広がったことでした。
 西貝は当初、半調理品の使用を否定し法的措置も示唆する強硬姿勢を見せましたが、その後に実施した「厨房ライブ配信」で、時計をつけたままの調理や、下水の詰まりをジャーレン(油切り)で掻き出すといった場面が映り、衛生面の不備が露見。長期保存可能な冷凍食材の使用実態も示され、同社の「店内仕込み」を掲げた宣伝との齟齬が浮き彫りになりました。
 西貝は謝罪と是正を表明したものの、創業者・賈国龍氏の「顧客に何度もいじめられて……」といった発言が再び反発を招き、世論の焦点は、①半調理品の定義が不透明なこと、②子ども向けメニューの価格が割高であること、③改善への本気度が見えにくいこと、に集中。店舗の客足は大きく落ち、プリペイド制会員カードの返金(退会)も相次いでいます。一方で、中国の半調理品の食品安全基準(草案)も、この騒動を機に制定へと前進しています。
 多くの消費者は、半調理品の全面排除を望んでいるわけではなく、明確な情報開示(知る権利の保障)、妥当な価格設定、そして企業の誠実なコミュニケーションがあれば納得できると思います。日本でもそうですが、一つの対応ミスで信頼が崩れるということになります。今回の西貝の一件は、その典型的な事例だといえます。

 

三石


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