日本が到達すべき中国進出の「グローバルスタンダード」
キャストコンサルティング(上海)有限公司
総経理 前川晃廣
(中小企業診断士/証券アナリスト)
日中関係の改善がなかなか進まない中、2012年後半に短期的には下火になったと思われた日本企業の中国進出も、2013年年央からは回復の兆しが見えるようになりました。
今回の一件で、多くの日本企業が中国戦略を今一度見直そうとしたはずです。中国以外への進出を選択したところもあるでしょうが、一歩下がって中国戦略を再検討し、生産基地としてだけではなく消費市場として、中国での更なる事業拡大を企図している日本企業も多く見られます。
その企図の中には、新規進出だけではなく既存拠点の統廃合や再編もあるでしょう。統廃合や再編には、税務・税関の問題も関係してきますが、近時では労務問題がクローズアップされるケースが増えてきました。これら複雑なオペレーションを確実にコントロールするには、日本本社と駐在員の双方が中国に対する的確な共通理解を持った上で、「中国のスタンダード」を体得する必要があります。
日本企業の生産・販売地図は、以下のように変遷してきました。
①「日本で造って日本で売る」(戦後直後)
→②「日本で造って海外に売る」(昭和30年代から)
→③「海外で造って日本に売る」(円高以降)
→④「海外で造って海外に売る」(21世紀以降)
高度成長期以降の日本人がイメージする「グローバルスタンダード」は、あたかも、日本人がまだ知らない非日本的な「世界的基準」が存在するかのような脈略で語られることが多いのですが、世界の「スタンダード」は、「日本か、非日本か」の二社択一ではなく、もっと多様な「スタンダード」があるはずです。そして中国は、ヨーロッパの倍の面積に倍以上の人口が住んでいるのですから、各地域ごとにそれぞれの「スタンダード」があり、かつ、時間と共に急激に変化しています。
①~③の時代は、中国がマーケットとして認識されていなかったことから、「中国のスタンダード」をあまり意識しなくとも中国ビジネスをなんとか進めることができ、日本企業もそれなりの利益をあげることができました。④に入った今、欧米とは違う「中国のスタンダード」を正確に、そして精緻に知らなければ、激動の中国ビジネスを勝ち抜くことができない段階に来ている、と言えましょう。「知彼知己百戦不殆」(敵を知り己を知れば百戦あやうからず)です。知らないと戦いには参加できません。
21世紀前半に、中国が日本に求めるものは何か? 例えば、公害防止・水浄化などの環境ビジネス、省力化・自動化などの先進システム、安心して食べられる食糧、医療ツーリズムの拡大など、ヒントはたくさん転がっています。「中国のスタンダード」を知り、如何にして更なる成功を収めるか…。
キャストでは、「駐在員塾」のみならず「不正発見セミナー」「撤退セミナー」「税関セミナー」など、日本企業のニーズに合わせてタイムリーなセミナーを展開しています。今後もキャストの発信にご注目ください。まだまだ行ける中国ビジネス、これからの展開がますます楽しみです。