環境権利侵害責任紛争事件を審理する際の法律適用にかかる若干の問題に関する最高人民法院の解釈(2020年)
この解釈は、法釈[2023]5号(2023年8月14日公布、同年9月1日施行)により廃止されている。
2015年6月1日法釈[2015]12号により公布、同年6月3日施行
2020年12月29日法釈[2020]17号により改正公布、2021年1月1日施行
法釈[2020]17号
七、「環境権利侵害責任紛争事件を審理する際の法律適用にかかる若干の問題に関する最高人民法院の解釈」を改める。
1.序文を次のように改める。
「環境権利侵害責任紛争事件を正確に審理するため、『民法典』、『環境保護法』、『民事訴訟法』等の法律の規定に基づき、裁判の実践を考え合わせ、この解釈を制定する。」
2.第1条を次のように改める。
「環境を汚染し、又は生態を破壊することにより他人に損害をもたらした場合には、権利侵害者に故意・過失があるか否かを問わず、権利侵害者は、権利侵害責任を負わなければならない。
汚染物質の排出が国又は地方の汚染物質排出標準に適合することを理由として権利侵害者が責任を負わないと主張する場合には、人民法院は、支持をしない。
権利侵害者が責任を負わない、又は責任を軽減する事由には、海洋環境保護法、水汚染防止処理法、大気汚染防止処理法等の環境保護にかかる単行法の規定を適用し、関連する環境保護にかかる単行法に定めのない場合には、民法典の規定を適用する。」
3.第2条を次のように改める。
「2名以上の権利侵害者が環境汚染又は生態破壊行為を共同で実施して損害をもたらした場合において、被権利侵害者が民法典第1168条の規定に基づき権利侵害者に連帯責任を負うよう請求するときは、人民法院は、支持をしなければならない。」
4.第3条を次のように改める。
「2名以上の権利侵害者が環境汚染又は生態破壊行為をそれぞれ実施して同一の損害をもたらし、各権利侵害者の環境汚染又は生態破壊行為がいずれも損害の全部をもたらすのに足る場合において、被権利侵害者が民法典第1171条の規定に基づき権利侵害者に連帯責任を負うよう請求するときは、人民法院は、支持をしなければならない。
2名以上の権利侵害者が環境汚染又は生態破壊行為をそれぞれ実施して同一の損害をもたらし、各権利侵害者の環境汚染又は生態破壊行為がいずれも損害の全部をもたらすのに足る場合において、被権利侵害者が民法典第1172条の規定に基づき権利侵害者に責任を負うよう請求するときは、人民法院は、支持をしなければならない。
2名以上の権利侵害者が環境汚染又は生態破壊行為をそれぞれ実施して同一の損害をもたらし、一部の権利侵害者の環境汚染又は生態破壊行為は損害の全部をもたらすのに足り、一部の権利侵害者の環境汚染又は生態破壊行為は一部の損害をもたらすのみである場合において、被権利侵害者が民法典第1171条の規定に基づき、損害の全部をもたらすのに足る権利侵害者とその他の権利侵害者に、共同でもたらした損害部分について連帯責任を負い、かつ、損害の全部に対し責任を負うよう請求するときは、人民法院は、支持をしなければならない。」
5.第4条を次のように改める。
「2名以上の権利侵害者が環境を汚染し、又は生態を破壊した場合の、権利侵害者が負う責任の大小について、人民法院は、汚染物質の種類、濃度、排出量及び危害性、汚染物質排出許可証の有無、汚染物質排出標準を超えるか否か、及び重点汚染物質排出総量規制指標を超えるか否か、生態破壊の方式、範囲及び程度並びに損害の結果に対し行為の果たした役割等の要素に基づき確定しなければならない。」
6.第5条を次のように改める。
「被権利侵害者が民法典第1233条の規定に基づき権利侵害者及び第三者についてそれぞれ、又は同時に訴えを提起する場合には、人民法院は、受理をしなければならない。
被権利侵害者が第三者に賠償責任を負うよう請求する場合には、人民法院は、第三者の故意・過失の程度に基づきその相応する賠償責任を確定しなければならない。
権利侵害者が第三者の故意・過失により環境が汚染され、又は生態が破壊され損害がもたらされたことを理由として責任を負わない、又は責任を軽減することを主張する場合には、人民法院は、支持をしない。」
7.第6条を次のように改める。
「被権利侵害者は、民法典第7編第7章の規定に基づき賠償を請求する場合には、次の事実を証明する証拠資料を提供しなければならない。
(一)権利侵害者が汚染物質を排出し、又は生態を破壊したこと。
(二) 被権利侵害者の損害
(三) 権利侵害者が排出した汚染物質又はその二次汚染物質並びに生態破壊行為と損害との間に関連性があること。」
8.第7条を次のように改める。
「権利侵害者が挙証して次に掲げる事由の1つを証明した場合には、人民法院は、その環境汚染又は生態破壊行為と損害との間に因果関係が存在しないことを認定しなければならない。
(一) 汚染物質を排出し、又は生態を破壊した行為には当該損害をもたらすおそれがないこと。
(二) 排出された、当該損害をもたらすおそれがある汚染物質が当該損害発生地に到達していないこと。
(三) 汚染物質を排出し、又は生態を破壊する行為の実施前に当該損害が既に発生していたこと。
(四) 環境汚染又は生態破壊行為と損害との間に因果関係が存在しないと認定することのできるその他の事由」
9.第8条を次のように改める。
「 環境汚染又は生態破壊事件の事実を究明する専門性にかかる問題について、関連する資格を具備する司法鑑定機構に委託して鑑定意見を発行させ、又は環境資源保護監督管理職責を負う部門が推薦する機構が検査報告、検査測定報告、評価報告又はモニタリングデータを発行することができる。」
10.第9条を次のように改める。
「当事者が専門知識を有する1名から2名の者に通知して出廷させ、鑑定意見又は汚染物質認定、損害結果、因果関係、修復措置等の専門業務にかかる問題について意見を提出させることを申し立てる場合には、人民法院は、許可をすることができる。当事者が申し立てずとも、人民法院は、必要があると認める場合には、釈明をすることができる。
専門知識を有する者が法廷上で提出した意見は、当事者の証拠質疑を経て、事件の事実を認定する根拠とすることができる。」
11.第10条を次のように改める。
「環境資源保護監督管理職責を負う部門又はその委託した機構が発行する環境汚染又は生態破壊事件調査報告、検査報告、検査測定報告、評価報告又はモニタリングデータ等は、当事者の証拠質疑を経て、事件の事実を認定する根拠とすることができる。」
12.第11条を次のように改める。
「突発性の、又は持続時間が比較的短い環境汚染又は生態破壊行為について、証拠が滅失するおそれがあり、又は以後は取得が困難となる状況において、当事者又は利害関係人が民事訴訟法第81条の規定に基づき証拠保全を申し立てる場合には、人民法院は、許可をしなければならない。」
13.第12条を次のように改める。
「被申立人に環境保護法第63条所定の事由の1つがあり、当事者又は利害関係人が民事訴訟法第100条又は第101条の規定に基づき保全を申し立てた場合には、人民法院は、被申立人に直ちに侵害行為を停止し、又は防止処理措置を講ずるよう命ずる旨を裁定することができる。」
14.第13条を次のように改める。
「人民法院は、被権利侵害者の訴訟請求及び具体的な情状に基づき、権利侵害者が侵害の停止、妨害の排除、危険の除去、生態環境の修復、礼を尽くした謝罪、損害の賠償等の民事責任を負うことを合理的に判定しなければならない。」
15.第14条を次のように改める。
「被権利侵害者が生態環境の修復を請求する場合には、人民法院は、権利侵害者が環境修復責任を負う旨を法により裁判し、かつ、同時に、当該権利侵害者が環境修復義務を履行しない場合に負担するべき環境修復費用を確定することができる。
効力を生じた裁判により確定された期間内に権利侵害者が環境修復義務を履行しなかった場合には、人民法院は、その他の者に委託して環境修復をさせることができ、必要となる費用については権利侵害者が負担する。
16.第15条を次のように改める。
「被権利侵害者が訴えを提起して、環境汚染又は生態破壊によりもたらされた財産上の損失、人身上の損害並びに損害の発生及び拡大の防止、汚染除去及び生態環境の修復のため必要な措置を講じるのに支出した合理的な費用を賠償するよう権利侵害者に請求する場合には、人民法院は、支持をしなければならない。」
17.第17条を削除する。
18.条文の順序について相応する調整をする。
環境権利侵害責任紛争事件を正確に審理するため、「民法典」、「環境保護法」、「民事訴訟法」等の法律の規定に基づき、裁判の実践を考え合わせ、この解釈を制定する。
第1条 環境を汚染し、又は生態を破壊することにより他人に損害をもたらした場合には、権利侵害者に故意・過失があるか否かを問わず、権利侵害者は、権利侵害責任を負わなければならない。
汚染物質の排出が国又は地方...