商標民事紛争事件を審理する際の法律適用にかかる若干の問題に関する最高人民法院の解釈(2020年)
2002年10月12日最高人民法院法釈[2002]32号により公布、同月16日施行
2020年12月29日最高人民法院法釈[2020]19号により公布、2021年1月1日施行
法釈[2020]19号
四、「商標民事紛争事件を審理する際の法律適用にかかる若干の問題に関する最高人民法院の解釈」を改める。
1.序文を次のように改める。
「商標紛争事件を正しく審理するため、『民法典』、『商標法』、『民事訴訟法』等の法律の規定に基づき、法律適用にかかる若干の問題について次のように解釈する。」
2.第1条を次のように改める。
「次に掲げる行為は、商標法第57条第(七)号所定の他人の登録商標専用権にその他の損害をもたらす行為に該当する。
(一)他人の登録商標と同一の、又は近似する文字を企業の屋号として、同一の、又は類似する商品に目立つように使用し、関連公衆をして容易に誤認を生じさせる行為
(二)他人が登録した著名商標又はその主要部分を複製し、模倣し、又は翻訳し、同一でなく、又は類似しない商品に商標として使用し、公衆を誤導して当該著名商標登録人の利益をして損害を受けさせるおそれのある行為
(三)他人の登録商標と同一の、又は近似する文字を登録してドメイン名とし、かつ、当該ドメイン名を通じて関連する商品取引の電子商取引をし、関連公衆をして容易に誤認を生じさせる行為」
3.第2条を次のように改める。
「商標法第13条第2項の規定により、他人が中国において登録していない著名商標又はその主要部分を複製し、模倣し、又は翻訳し、同一の、又は類似する商品に商標として使用し、容易に混同をもたらす場合には、侵害停止の民事法律責任を負わなければならない。」
4.第3条を次のように改める。
「商標法第43条所定の商標使用許諾には、次の3類を含む。
(一)『独占的使用許諾』とは、商標登録人が約定された期間及び地域において、並びに約定された方式により、当該登録商標につき1名の被許諾者による使用のみを許諾し、商標登録人が約定により当該登録商標を使用してはならないものをいう。
(二)『排他的使用許諾』とは、商標登録人が約定された期間及び地域において、並びに約定された方式により、当該登録商標につき1名の被許諾者による使用のみを許諾し、商標登録人が約定により当該登録商標を使用することができるけれども別途他人による当該登録商標の使用を許諾してはならないものをいう。
(三)『普通使用許諾』とは、商標登録人が約定された期間及び地域において、並びに約定された方式により、他人によるその登録商標の使用を許諾し、かつ、当該登録商標を自ら使用し、及び他人によるその登録商標の使用を許諾することができるものをいう。」
5.第4条を次のように改める。
「商標法第60条第1項所定の利害関係人には、登録商標使用許諾契約の被許諾者及び登録商標の財産権の適法な相続人等を含む。
登録商標専用権の被侵害が発生した場合には、独占的使用許諾契約の被許諾者は、人民法院に対し訴えを提起することができる。排他的使用許諾契約の被許諾者は、商標登録人と共同して訴えを提起することができ、また、商標登録人が訴えを提起しない場合には、自ら訴えを提起することもできる。普通使用許諾契約の被許諾者は、商標登録人の明確な授権を経て、訴えを提起することができる。」
6.第6条を次のように改める。
「登録商標専用権侵害行為に起因して提起される民事訴訟については、商標法第13条及び第57条所定の権利侵害行為の実施地、権利侵害商品の貯蔵地又は封印・差押地及び被告の住所地の人民法院が管轄する。
前項所定の『権利侵害商品の貯蔵地』とは、権利侵害商品が大量に、又は経常的に貯蔵・保管され、又は隠匿される所在地をいう。『封印・差押地』とは、税関等の行政機関が法により権利侵害商品を封印し、又は差し押える所在地をいう。」
7.第9条を次のように改める。
「商標法第57条第(一)号及び第(二)号所定の『商標と同一』とは、権利侵害を主張される商標と原告の登録商標とを比較し、二者が視覚上において基本的に区別のないことをいう。
商標法第57条第(二)号所定の『商標と近似』とは、権利侵害を主張される商標と原告の登録商標とを比較し、その文字の字形、称呼、意義若しくは図形の構図及び色彩若しくはその各要素を組み合わせた後の全体構造が相似し、又はその立体形状若しくは色彩の組合せが近似し、関連公衆をして商品の出所について容易に誤認を生じさせ、又はその出所と原告の登録商標の商品とに特定の連係があると容易に認めさせることをいう。」
8.第10条を次のように改める。
「人民法院は、商標法第57条第(一)号及び第(二)号の規定により、商標が同一であり、又は近似すると認定する場合には、次の原則に従い行う。
(一)関連公衆の通常の注意力を標準とする。
(二)商標に対する全体的対比をすることを要し、また、商標の主要部分に対する対比をすることも要する。対比については、対比対象を隔離した状態のもとで、それぞれ行わなければならない。
(三)商標が近似するか否かを判断するにあたっては、保護が請求される登録商標の顕著性及び知名度を考慮しなければならない。」
9.第11条を次のように改める。
「商標法第57条第(二)号所定の「類似する商品」とは、機能、用途、生産部門、販売ルート、消費対象等の面において同一であり、又は関連公衆が一般にそれらに特定の連係が存在すると認め、かつ、容易に混同をもたらす商品をいう。
「類似するサービス」とは、サービスの目的、内容、方式、対象等の面において同一であり、又は関連公衆が一般に特定の連係が存在すると認め、かつ、容易に混同をもたらすサービスをいう。
「商品とサービスとが類似する」とは、商品とサービスとの間に特定の連係が存在し、関連公衆をして容易に混同させることをいう。」
10.第12条を次のように改める。
「人民法院は、商標法第57条第(二)号の規定により、商品又はサービスが類似するか否かを認定するにあたり、関連公衆の商品又はサービスに対する一般認識により総合的に判断しなければならない。「商品・サービス国際分類表」及び「類似商品及びサービス区分表」は、類似する商品又はサービスを判断する参考とすることができる。」
11.第13条を次のように改める。
「人民法院は、商標法第63条第1項の規定により権利侵害者の賠償責任を確定する場合には、権利者の選択した計算方法に基づき賠償金額を計算することができる。」
12.第14条を次のように改める。
「商標法第63条第1項所定の権利侵害により取得した利益については、権利侵害商品の販売量と当該商品の単位利益との積に基づき計算することができる。当該商品の単位利益を究明するすべのない場合には、登録商標商品の単位利益に従い計算する。」
13.第15条を次のように改める。
「商標法第63条第1項所定の、権利被侵害により受けた損害については、権利者が権利侵害により受けた商品の販売減少量又は権利侵害商品の販売量と当該登録商標商品の単位利益との積に基づき計算することができる。」
14.第16条を次のように改める。
「権利者が権利被侵害により受けた実際の損失、権利侵害者が権利侵害により取得した利益及び登録商標使用許諾料につきいずれも確定しがたい場合には、人民法院は、当事者の請求に基づき、又は職権により商標法第63条第3項の規定を適用して賠償金額を確定することができる。
人民法院は、商標法第63条第3項の規定を適用して賠償金額を確定する際に、権利侵害行為の性質、期間及び結果、権利侵害者の主観的故意・過失の程度、商標の名声・名誉並びに権利侵害行為差止めのための合理的支出等の要素を考慮して総合的に確定しなければならない。
当事者が第1項の規定に従い賠償金額につき合意を達成した場合には、これを許可しなければならない。」
15.第17条を次のように改める。
「商標法第63条第1項所定の権利侵害行為を差し止めるために支払った合理的支出には、権利者又は委託代理人が権利侵害行為について調査及び証拠取得をした合理的費用を含む。
人民法院は、当事者の訴訟請求及び事件の具体的状況に基づき、国の関係部門の規定に適合する弁護士費用を賠償範囲内に算入することができる。」
16.第18条を次のように改める。
「登録商標専用権侵害の訴訟時効は、3年とし、損害を受けたこと及び義務者を商標登録人又は利害関係人が知り、又は知るべき日から起算する。商標登録人又は利害関係人が3年を超えて訴えを提起した場合において、権利侵害行為が訴え提起の時になお持続しているときは、当該登録商標専用権の有効期間内に、人民法院は、被告が権利侵害行為を停止するよう判決しなければならない。権利侵害損害賠償金額については、権利者が人民法院に対し訴えを提起した日から過去に3年遡って計算しなければならない。」
17.第19条第2項を削除する。
18.第21条を次のように改める。
「人民法院は、登録商標専用権侵害紛争事件を審理する際に、民法典第179条及び商標法第60条の規定並びに事件の具体的状況により、権利侵害者が侵害の停止、妨害の排除、危険の除去、損害の賠償、影響の除去等の民事責任を負うよう判決することができ、更に罰金にかかる、並びに権利侵害商品、偽造された商標標識、及び権利侵害商品の生産に主として用いられた材料、手段、設備等の財物を強制回収する旨の民事制裁決定をすることができる。罰金金額については、商標法第60条第2項の関係規定を参照して確定することができる。
行政管理部門が同一の登録商標専用権侵害行為について既に行政処罰をしている場合には、人民法院は、その後は民事制裁をしない。」
商標紛争事件を正しく審理するため、「民法典」、「商標法」、「民事訴訟法」等の法律の規定に基づき、法律適用にかかる若干の問題について次のように解釈する。
第1条 次に掲げる行為は、商標法第57条第(七)号所定の他人の登録商標専用権にその他の損害をもたらす行為に該当する。
(一)他人の登録商標と同一の、又は近似する文字を企業の屋号として、同一の、又は類似する...