売買契約紛争事件を審理する際の法律適用問題に関する最高人民法院の解釈(2020年)
2012年5月10日最高人民法院法釈[2012]8号により公布、同年7月1日施行
2020年12月29日最高人民法院法釈[2020]17号により公布、2021年1月1日施行
法釈[2020]17号
三、「売買契約紛争事件を審理する際の法律適用問題に関する最高人民法院の解釈」を改める。
1.序文の部分を次のように改める。
「売買契約紛争事件を正確に審理するため、『民法典』、『民事訴訟法』等の法律の規定に基づき、裁判の実践を考え合わせ、この解釈を制定する。」
2.「一、売買契約の成立及び効力」を次のように改める。
「一、売買契約の成立」
3.第2条から第4条、第15条、第16条、第18条、第28条、第30条、第32条、第35条、第37条、第41条及び第43条を削除する。
4.第5条を次のように改める。
「目的物が有形媒体により引き渡す必要のない電子情報製品であり、引渡し方式に対する当事者の約定が明確でなく、かつ、民法典第510条の規定によってもなお確定することができない場合には、買主が約定にかかる電子情報製品又は権利証憑を受領すれば、これを引渡しとする。」
5.第6条を次のように改める。
「民法典第629条の規定に基づき、買主は、過剰に引き渡された部分の目的物の受領を拒絶する場合には、過剰に引き渡された部分の目的物を代理保管することができる。代理保管期間の合理的な費用を売主が負担するよう買主が主張する場合には、人民法院は、これを支持しなければならない。
代理保管期間における買主の故意又は重大な過失によらないでもたらされた損失を売主が引き受けるよう買主が主張する場合には、人民法院は、これを支持しなければならない。」
6.第7条を次のように改める。
「民法典第599条所定の『目的物の引取りにかかる書類以外の関係書類及び資料』には、主として保険証券、修理保証書、普通発票、増値税専用発票、製品合格証、品質保証書、品質鑑定書、品質検査証書、製品輸出入検疫書、原産地証明書、使用説明書、パッキングリスト等を含まなければならない。」
7.第11条を次のように改める。
「民法典第603条第2項第(一)号所定の『目的物について運送する必要がある場合』とは、目的物につき売主が託送を手続することに責任を負い、運送人は売買契約当事者から独立した運送業者である状況をいう。目的物の毀損及び滅失の危険負担については、民法典第607条第2項の規定に従い処理する。」
8.第17条を次のように改める。
「人民法院は、民法典第621条第2項所定の『合理的な期間』を具体的に認定する際には、当事者間の取引の性質、取引目的、取引方式及び取引慣習、目的物の種類、数量、性質、据付け及び使用にかかる状況、瑕疵の性質、買主が尽くすべき合理的な注意義務、検査方法及び難易度、買主又は検査者のおかれている具体的環境及び自身の技能その他の合理的な要素を総合し、信義誠実の原則により判断をしなければならない。
民法典第621条第2項所定の『2年』は、最も長い合理的な期間である。当該期間は、不変期間であり、訴訟時効の中止、中断又は延長の規定を適用しない。」
9.第19条を次のように改める。
「買主が合理的な期間内において異議を提出した場合において、買主が既に代金を支払い、代金未払金額を確認し、目的物を使用している等を理由として、買主が異議を放棄するよう売主が主張する場合には、人民法院は、これを支持しない。ただし、当事者に別段の約定がある場合を除く。」
10.第20条を次のように改める。
「民法典第621条所定の検査期間、合理的な期間又は2年の期間が経過した後に、買主が目的物の数量又は品質が約定に適合しない旨を主張する場合には、人民法院は、これを支持しない。
売主が自由意思により違約責任を引き受けた後に、上記期間が経過したことを理由として翻意した場合には、人民法院は、これを支持しない。」
11.第21条を次のように改める。
「買主が約定により代金の一部を留保して品質保証金とする場合において、売主が品質保証期間に遅滞なく品質問題を解決せずに目的物の価値又は使用効果に影響し、売主が当該部分の代金を支払うよう主張するときは、人民法院は、これを支持しない。」
12.第22条を次のように改める。
「買主が検査期間、品質保証期間又は合理的な期間内に品質にかかる異議を提出する場合において、売主が要求どおりに修理せず、又は状況が緊急であることにより、買主が自ら、又は第三者を通じて目的物を修理した後に、これにより発生した合理的な費用を売主が負担するよう主張するときは、人民法院は、これを支持しなければならない。」
13.第23条を次のように改める。
「目的物の品質が約定に適合せず、買主が民法典第582条の規定により代金の減少を要求する場合には、人民法院は、これを支持しなければならない。当事者が約定に適合する目的物及び実際に引き渡された目的物をもって引渡し時の市場価値に従い差額を計算するよう主張する場合には、人民法院は、これを支持しなければならない。
代金が既に支払われた場合において、買主が減額後の過多部分の代金を返還するよう主張するときは、人民法院は、これを支持しなければならない。」
14.第24条を次のように改める。
「売買契約において代金支払期限についてなされた変更は、当事者の期限を徒過した代金支払いにかかる違約金に関する約定には影響しない。ただし、当該違約金の起算点については、これに伴い変更しなければならない。
売買契約に期限を徒過した代金支払いにかかる違約金を約定した場合において、売主が代金を受領した際に期限を徒過した代金支払いにかかる違約金を主張しなかったことを理由として当該違約金の支払いを買主が拒絶するときは、人民法院は、これを支持しない。
売買契約に期限を徒過した代金支払いにかかる違約金を約定したけれども、取引明細書、代金返還合意等において期限を徒過した代金支払いにかかる責任に言及しない場合において、売主が取引明細書、代金返還合意等に基づき代金未払いを主張する際に買主に対し約定により期限を徒過した代金支払いにかかる違約金を支払うよう請求するときは、人民法院は、これを支持しなければならない。ただし、取引明細書、代金返還合意等において元金及び期限を徒過した代金支払いにかかる利息金額を明確に記載している場合又は売買契約における元金、利息等に関する約定の内容を既に変更している場合を除く。
売買契約において期限を徒過した代金支払いにかかる違約金又は当該違約金の計算方法を約定しておらず、買主の違約を理由として期限を徒過した代金支払いにかかる損失を賠償するよう売主が主張する場合において、違約行為が2019年8月19日までに発生したときは、人民法院は、中国人民銀行の同一期間・同一種類の人民元貸付基準利率を基礎とし、期限徒過にかかる遅延利息の利率標準を参照して計算することができる。違約行為が2019年8月20日以後に発生したときは、人民法院は、違約行為発生時の、中国人民銀行が全国インターバンクコールローンセンターに授権して公表させる1年物のローンプライムレート(LPR)の標準を基礎とし、30%から50%を加算して期限を徒過した代金支払いにかかる損失を計算することができる。」
15.第25条を次のように改める。
「売主が従たる給付義務を履行せず、又はこれを不当に履行し、買主に契約目的を実現不能にさせた場合において、買主が契約の解除を主張するときは、人民法院は、民法典第563条第1項第(四)号の規定に基づき、これを支持しなければならない。」
16.第26条を次のように改める。
「売買契約が違約に起因して解除された後において、約定遵守当事者が違約金条項の適用を継続するよう主張する場合には、人民法院は、これを支持しなければならない。ただし、約定された違約金がもたらされた損失を過分に上回る場合には、人民法院は、民法典第585条第2項の規定を参照して処理することができる。」
17.第29条を次のように改める。
「売買契約当事者の一方の違約により相手方に損失をもたらし、相手方が得べかりし利益の損失を賠償するよう主張する場合には、人民法院は、違約責任の範囲を確定する際に、当事者の主張に基づき、民法典第584条、第591条及び第592条、この解釈第23条等の規定に基づき認定をしなければならない。」
18.第34条を次のように改める。
「売買契約当事者が民法典第641条の目的物所有権の留保に関する規定を不動産に適用するよう主張する場合には、人民法院は、これを支持しない。」
19.第36条を次のように改める。
「買主が目的物の総代金の100分の75以上を既に支払った場合において、売主が目的物を取り戻すことを主張するときは、人民法院は、これを支持しない。
民法典第642条第1項第(三)号の事由のもと、第三者が民法典第311条の規定により目的物の所有権その他の物権を既に善意により取得した場合において、売主が目的物を取り戻すことを主張するときは、人民法院は、これを支持しない。」
20.第38条を次のように改める。
「民法典第634条第1項所定の『代金を分割して支払う』とは、買主が支払うべき代金総額を一定の期間内に少なくとも3回に分けて売主に対し支払うことをいう。
代金分割支払売買契約の約定が民法典第634条第1項の規定に違反し、買主の利益を損なう場合において、買主が当該約定の無効を主張するときは、人民法院は、これを支持しなければならない。」
21.第42条を次のように改める。
「売買契約に次に掲げる約定内容の1つが存在する場合には、試用売買に属しない。買主が試用売買に属する旨を主張する場合には、人民法院は、これを支持しない。
(一)目的物が試用又は検査を経て一定の要求に適合する場合に買主が目的物を購入するべき旨を約定するとき。
(二)第三者が試験を経て目的物について認可する場合に買主が目的物を購入するべき旨を約定するとき。
(三)買主が一定の期間内に目的物を交換することができる旨を約定するとき。
(四)買主が一定の期間内に目的物を返還することができる旨を約定するとき。」
22.第45条を次のように改める。
「法律又は行政法規に債権譲渡、持分譲渡等の権利譲渡契約について規定がある場合には、当該規定による。規定がない場合には、人民法院は、民法典第467条及び第646条の規定に基づき、売買契約の関係規定を参照して適用することができる。
権利譲渡その他の有償契約につき売買契約の関係規定を参照して適用する場合には、人民法院は、まず民法典第646条の規定を引用し、その後に売買契約の関係規定を引用しなければならない。」
23.条文の順序について相応する調整をする。
売買契約紛争事件を正確に審理するため、「民法典」、「民事訴訟法」等の法律の規定に基づき、裁判の実践を考え合わせ、この解釈を制定する。
第1条 当事者間に書面による契約がなく、一方が貨物送付書、貨物受領書、決済書、発票等により売買契約関係の存在を主張する場合には、人民法院は、当事者間の取引方式、取引慣習及びその他関連する証拠を考え合...
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