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【ミニコラム 第92号】中国人俳優がミャンマーの詐欺団地に連れ去られた事件

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2025年01月17日


 2025年の幕開けは、穏やかならぬものとなりました。先週のコラムでお伝えしたチベット地震に続き、中国人俳優の王星さんがタイで行方不明になったというニュースが、多くの人々を驚かせました。
 王星さんは1月3日、ドラマ撮影のためタイに向かいましたが、到着後すぐにタイ・ミャンマー国境付近で姿を消しました。彼のガールフレンドが警察に通報するとともに、SNSを通じて助けを求めたことで、この事件は広く注目を集めました。
 数日間にわたる関係者の懸命な捜索の結果、1月7日、王星さんは無事に救出され、バンコクへ戻ることができました。その後のインタビューで、王星さんはミャンマーの「ミャワディ詐欺団地」に拉致されていたと語り、その壮絶な体験を明かしました。髪を剃られ、詐欺の訓練を強要されるなど、想像を絶する状況で空腹に苦しみ、トイレに行く力さえも奪われていたといいます。
 こうした事件は、決して珍しいものではありません。他の俳優や映画制作関係者、さらには一般の労働者たちも同様の被害に遭っているケースが報告されています。これらの事例を受け、多くの人々がタイへの渡航に不安を抱き、一部では旅行のキャンセルが相次いでいます。さらには、歌手のイーソン・チャンや中国の喜劇王・趙本山によるタイでの公演も、安全上の理由から中止や延期となりました。
 一方で、王星さんの救出劇は、同じくミャンマーで行方不明になった人々の家族に希望をもたらしました。ミャンマーで音信不通になった人々の家族が集まるオンライングループでは、「星々の帰国プロジェクト」という取り組みが進められています。このプロジェクトは、誘拐された人々の情報を集め、救出の可能性を広げることを目的としています。1月12日までに、このプロジェクトには1,564人もの家族が登録し、大切な人を取り戻そうと活動を続けています。
 こうした取り組みがさらなる注目を集め、より多くの被害者が無事に家族のもとへ戻れることを願うばかりです。

三石


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