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【ミニコラム 第154号】公私混同

メールマガジン
2026年05月08日


 最近、ある職場のニュースが話題になりました。江蘇省無錫で、個人の携帯番号でWeChatに登録し業務に使っていた社員が、2年のあいだに600以上の顧客グループを作成していたというものです。退職時に会社とトラブルになり、アカウントの引き継ぎを拒否しましたが、最終的に裁判所は、そのアカウントに蓄積された顧客資源は会社に帰属すると判断しました。社員は登録情報の変更に協力する義務を負い、一方で会社は、立て替えられていた760元の通信費を支払うよう命じられました。

 ポイントは、アカウントが個人名義で登録されていたとしても、実態として長期間にわたり業務専用に使われていた点にあります。裁判所は、グループ内の顧客情報は会社の関与のもとで形成されたデジタル資産にあたると評価しました。退職時には、こうした業務資源を適切に引き継ぐ必要があり、これを拒む行為は会社の財産権を侵害するものと位置づけられています。

 今回の事案は、職場で広く見られる「公私アカウントの混同」という問題を改めて浮き彫りにしています。現場では、やむを得ず私用アカウントで業務対応をしているケースも少なくありませんが、そのままにしておくと、退職時に思わぬトラブルにつながりがちです。

 私用アカウントであっても、実質的に業務専用として使っている場合には、退職時に法に基づいた引き継ぎが求められます。企業側としては、あらかじめ運用ルールや管理体制を整えておくことが重要ですし、従業員の側でも、業務に伴う立替費用については証拠をきちんと残しておく、といった基本的な対応が求められるでしょう。
 

三石


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