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【ミニコラム 第79号】火がつく観光地、下火であるべき保護区域

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2024年10月11日


 最近、あまり知られていなかった山脈が突如として全国的な注目を集めました。それは、雲南省の中心部に位置する「哀牢山」です。この山脈の面積は約1万平方キロメートルに及び、その北部と中部の一部は1988年に国立自然保護区に指定されています。周辺部ではいくつかの観光事業が開発されていますが、山脈の奥地は依然として手つかずの聖域で、訪れる人はほとんどいません。原生林や多くの断崖が点在し、さまざまな野生動物が生息しています。そのため、不用意に立ち入ると危険にさらされるおそれがあり、実際に2011年には公式調査チームの4人が哀牢山の奥地で調査中に連絡が途絶え、遭難したこともあるほどです。

 ところが、今年の国慶節の期間中、哀牢山は予想外の人気を博し、多くの観光客が訪れ、普段は静かな山道が深刻な渋滞に陥りました。そのきっかけとなったのは、あるビデオブロガーが「鉱山を得るために山に」という冒険動画を公開したことです。この動画が人気を集めた結果、他のインフルエンサーが後に続き、更に冒険心を刺激された多くの人々が哀牢山に殺到しました。

 このビデオブロガーは、鉱石を掘削することを事前に届け出ていなかったため、哀牢山保護局から批判と教育を受け、鉱石の返還を求められました。しかし、幸いにも立入禁止区域には入っていなかったため、その他の処罰は受けませんでした。一方、流行に便乗してアクセスを稼ごうとした他のインフルエンサーは、哀牢山でキャンプをし、2つの保護区を通過する様子を映した動画を投稿したことで、管理局から調査を受けているそうです。

 哀牢山の突然の人気は、現代社会における自然への冒険願望と、ソーシャルメディアが大衆の行動に与える大きな影響力を反映しています。しかし、興奮と新鮮な体験を求める際には、自然の力や潜在的な危険とともに、コンプライアンスにも常に注意を払う必要があるようです。


 

三石


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