キャスト中国ビジネス

【ミニコラム 第13号】借家が斎場になった!

メールマガジン
2023年06月02日


 法制網で「そんなことある!? 出勤中に借家がまさかの斎場に...」という記事を目にしました。
 記事によれば、上海市松江区に部屋を借りて住んでいる王さん(女性)は、出勤途中に家主から電話を受け、「あの部屋を葬儀で使うので、数日間ホテルに行ってもらえないか」と言われました。王さんが急いで家に戻ってみると、部屋には祭壇が据えられ、ご老人の棺がおかれていて、弔問に訪れた親族までいたため、ショックを受けました。家主からの電話は、相談ではなく、一方的な通知だったのです。びっくりした王さんは一時的にホテルに泊まりましたが、その後は怖くて住み続けられなくなり、家主を訴えて、賃貸契約の解除、保証金と前払い家賃の返還、契約違約金、ホテル代、休業補償費、精神的苦痛による慰謝料として、合計4万元の支払いを求めました。
 家主の主張は、「家は自分の所有物であり、地元の習慣によれば、高齢者がなくなった場合、葬儀の前の数日間、元の住居に安置しなければならない。王さんのホテル費用だけは補償する意思があるが、王さんが賃貸契約を解除する場合、自身には契約違反の責任がない」というものでした。
 上海松江裁判所の裁判官は、賃貸契約の履行中、王さんは住宅に対し合法的な占有と使用の権利を有しており、家主が無断で部屋に侵入し、故人の遺体を安置したことは、基本的な契約違反を構成し、一定の精神的損害を構成するめ、契約は当然に解除され、相応の損失を補償すべきと判断しました。裁判官の諭告と意思疎通の後、王さんと家主は平和的に契約を解除し、家主は王さんに保証金と前払い家賃を返還したうえで、その場で8000元余りを補償しました。
 ここの事件の根本的な原因は、家主の法的意識が弱く、借主のプライバシー権や借家利用権を侵害したことです。現代社会、特に大都市圏では、家を借りる行為はごく一般的なものになっています。入居者が自身の安全やプライバシーを守るためには、賃貸契約締結の最初の段階で、物件の鍵のシリンダー交換を家主に交渉するのがベターな方法かもしれません。また、家主の立場からすると、借主が損害を認めないというような事態を避けるために、部屋を貸す前に元の家具や内装の現状を写真に撮っておくことが重要でしょう。 

(三石)
 

>>> コラムアーカイブ