広東省で加工貿易に携わるために不可欠な知識を紹介する税関セミナーが10日、広州市で開かれ、弊グループの高師坤律師が参加した約60名の日系企業関係者に対し、実務上の重要ポイントについて解説した。以下ではその概要をご紹介します。 中国の輸出入量は年々増加をたどり、2005年度の輸出入総額は2001年度の3倍に達する勢いで延びており、加工貿易に係る輸出入額も同じような伸び率で増加しています。但し、中国のWTO加盟に伴い、関税率が年々引き下げられており、2005年の平均関税率は9.9%と2001年の15.3%から5%余りもダウンしています。 このように輸入量は増加していくものの、関税率が引き下げられるという状況の中にあって、税関は関税収入確保のために加工貿易に係る関税脱税、即ち密輸案件の調査、立件に傾注しているといわれています。特に広東地区は中国全土の加工貿易輸出入額の4割強を占めているといわれており、加工貿易に係る税関問題は多くの企業にとって非常に大きなリスクが発生する可能性のある問題だといえます。 加工貿易はご存知の通り、原材料を保税で中国国内に輸入し、その原材料を使用して製品を生産し、輸出する取引になりますが、この取引においてどのような問題が発生しやすく、かつ、税関の注意を引くことになるかというと、大きく区分して、①加工貿易手冊申請時に記入する「単耗数量」の不正確、②輸入数量の不正確、③国内販売用製品との原材料混用問題、外注加工の手続不備、廃材管理不備、③輸出数量の不正確、不良品交換の手続き不備、⑤空転 などが挙げられます。また、これらの問題の発生と加工貿易を行っていくことは常に背中合わせになっており、逆に言えば、税関にとってちょっと突けば何らかのほこりがでるのが加工貿易取引であるともいえます。 このような中、税関がまず注目する企業は、管理制度不備の企業、国内販売を行う企業、理論計算上の在庫高の多い企業、プラスチック、鋼材等内外価格差の大きい原材料を扱う加工企業、単耗の高い企業、原材料輸入量が生産能力を上回る企業等になります。税関が関税脱税の疑い、引いては密輸の疑いがあるとして調査に入った場合、最近は行政処分ではなく刑事処分に持っていくことが多く、罰金が科せられるだけではなく、最悪は責任者の逮捕という事態にまで持ち込まれることもあり得ます。 このようなリスクを回避するためにも、常日頃から日本人管理者が加工貿易への理解を深め、通関担当者とのコミュニケーションを密にし、かつ通関担当者にすべてを任せきりにするのではなく、会社内でのチェック体制を徹底していくべきです。なお、すでに問題を内包している会社にとっては、税関の調査が入ることは非常に恐怖だと思われます。このようなときによくあるのが、自称「税関へ仲介する」人間がいるので、いくら出せばその人が話をつけてくれるというような類の話しです。但し、このような話には決して乗ってはいけません。関税脱税だけでなく贈賄罪等別の法律違反にまで問われるリスクを抱えるからです。このようなときは早急に弁護士等の専門家へ相談し、現在、どのような税関リスクを抱えているのかを税関から調査を受ける前に、まず自主的に加工貿易のリスクレビューしたうえで、その対策を考えていくのが最善の策だと思われます。 |
文責:キャストコンサルティング(上海)有限公司広州分公司 税理士 永野弘子 講演者:上海市世民律師事務所 律師 高師坤 |