2024年の4月15日、全人民国家安全教育デーに際して、中国の国家安全機関が発表したところによると、海外企業が中国のレアアース分野に関する国家機密を不法に収集・窃取していた問題が明らかになりました。この事件では、中国人従業員である葉が、外国籍の従業員の指示の下で、中国国内のレアアース関連企業の副総経理である成を金銭で買収し、機密級の国家秘密7件を不法に偵察し、境外に提供したとされています。2023年11月、江西省南昌市中級人民法院は、葉に対し、境外のため国家秘密を買い取り、不法に提供した罪により有期懲役11年の判決を下しました。また、成には、境外のため国家機密を不法に提供した罪および収賄罪により、有期懲役11年6か月の判決が言い渡されました。
ビジネス取引を偽装
2017年、葉は、外国の非鉄金属の会社を代表して中国のレアアースの会社を訪問し、当時業務課長だった成と知り合いました。年齢が近いこともあって、二人はすぐに打ち解け、成はその後、葉の同行で何度も海外出張をし、答礼訪問を行いました。
業務連絡が頻繁になるにつれて、葉は外国のクライアントとの提携に必要だとして、レアアース業界の関連データを入手するよう成に度々依頼するようになりました。成は「顧客との関係維持のため」として、情報漏洩のリスクがあることを認識しつつも、自分だけは大丈夫だろうと考え、葉の要求に応じてデータを提供し続けました。
経済的利益による結びつき
成は業務課長から業務部マネージャーへ昇進し、その後さらに副総経理となるにつれて、自身の「価値」が高まったと感じるようになり、金銭への欲望も一層強くなりました。そこで、成が第三者の会社を巻き込む形で、葉と協力しレアアース取引の差額で利益を得ることを提案したところ、相手方はこれについてしばらく考えてから同意しました。成はこの取引から得た利益の半分を自分のものとし、その見返りに葉にレアアース業界の内部情報を提供し続けました。事件が発覚するまでの間に、成は現金や海外送金を通じて国外の非鉄金属会社から約51万米ドルを受け取り、その大部分は家族の海外での支出に充てられました。
中核的な内部情報がポイント
レアアースは先端科学技術や軍事工業などの分野で広く使用されており、現代の工業において不可欠な重要な元素です。中国のレアアース産業は、豊富な資源埋蔵量、先進的な製錬分離技術、整備された産業チェーン、完備された戦略的備蓄体系といった強みを持ち、世界のレアアース産業の最前線に位置しています。これにより、中国は世界的な資源の優位性と産業チェーンの優位性を形成しています。
そのため、外国は中国のレアアースの貯蔵状況に強い関心を持っており、あらゆる手段を使って内部データを入手しようとしています。レアアースのデータが漏洩すると、中国のレアアース産業の優位性が損なわれるだけでなく、国際的な戦略的交渉にも影響を及ぼす可能性があります。本件においては、外国の非鉄金属会社が様々なルートを駆使して中国のレアアース貯蔵入札会の日時を正確に把握し、入札会の後すぐに葉に指示を出して、成から具体的なデータを入手させていました。一方、成はレアアース業界の内部者として最新の貯蔵状況を把握し、相手方にとって長期的に安定した秘密の供給源となっていたのです。
国家安全機関からの注意喚起
境外のため国家秘密又は情報を窃取し、偵察し、買い取り、又は不法に提供する罪は、国の安全に重大に害を及ぼす犯罪です。
「中華人民共和国刑法」第111条には、「境外の機構、組織又は人員のため、国家秘密又は情報を窃取し、偵察し、買い取り、又は不法に提供した者は、5年以上10年以下の有期懲役に処する。情状が特別に重大である場合には、10年以上の有期懲役又は無期懲役に処する。情状が比較的軽い場合には、5年以下の有期懲役、拘役、管制又は政治的権利の剥奪に処する」と定められています。
スパイ行為を発見した市民や組織は、速やかに国家安全機関に報告しなければなりません。国の安全に害を及ぼす違法行為や疑わしい手がかりを発見した場合は、速やかに12339国家安全機関通報受理電話、インターネット通報プラットフォーム( www.12339.gov.cn )、国家安全部WeChat公式アカウント通報受理ルートを通じて、又は直接に現地の国家安全機関に対し通報してください。
原文:案情剖析 | 伸向稀土的境外黑手(2024年9月12日国家安全部)
https://mp.weixin.qq.com/s/LrBQlLSg_i-dsZNUWzCHfA