株式会社 J&G HRアドバイザリー
代表取締役社長 篠崎正芳
「形」よりも「内容」をより重視する行動を習慣化させる
一般的な日本人は会議の場に参加者が「開始」から「終了」まで“居る”という「形」を重視しがちです。そのため、遅れてくる人、途中退席する人には「形」を壊す人、自分勝手な人という印象を持つことになります。しかし、多くの外国人は、このような「形」よりも会議の場での「内容」をより重視します。具体的には、会議の主催者(=オーナー)が、会議の目的やその場のゴールを達成することができ、一方で、参加者が「貢献できた」「スッキリした」「勉強になった」といったように会議の時間を自分にとって意味のある時間だと感じられることが大切なのです。外国人をマネージし彼らにリスペクトされ成果を一緒に達成していくためには、「形」にこだわり過ぎず、「内容」を重視する行動にシフトし、会議の質を高めることが重要です。今月は主催者がアップグレードしなければいけない5つの行動についてお話します。
会議の「種類」を決める
会議の種類には大きく分けて3つあります。会議を開催する際には、どの種類なのかをはっきりさせることが大切です。
① 共有=業績の現状や結果、プロジェクトの進捗状況、発生した問題、決定事項、連絡事項などが対象です。
② 議論=特定の問題や課題、会社や事業部門の方向性、方針、戦略、戦術、活動などが対象です。
③ ブレインストーミング(結論を出すことを目的とせず、アイデアや考えを自由に出し合う)=特定のテーマや課題が対象です。
必要な「人」を選ぶ
会議の種類それぞれにおいて、都度、必要な人に参加を求めることが参加意識を高めることになります。終身雇用のもとで「会社のため」という大義名分が成り立つ日本では、できるだけ多くの人に声をかけておこう、平等に機会を与えておこう、という考え方が効果的な場合もあります。しかし、海外の現地社員は、「自分のため」「自分の仕事のため」という意識が強いので、会議の主催者は、都度、必要な人を選んで参加を依頼し、その場で貢献を求めることが大切になるのです。
会議の開催について発信する
主催者は参加予定者に対して、参加意識を高めるよう働きかける必要があります。できればアシスタントに任せるのではなく、自らメールなどで発信する方が「顔」が見えるコミュニケーションになるので効果的です。その際には、アジェンダ(=議題)としての共有事項や議論のテーマ、タイムスケジュールはもとより、関係者が集まって直接的に共有し確認し合う、あるいは、議論することの意味や副次的に期待している効果などを都度自分の言葉でわかりやすく伝えることが大切です。また、会議でより多くの貢献を求めるために、宿題を与えて事前に準備させ、会議の前に主催者に提出させるというような工夫も効果的です。会議を主催する人がいるから会議が存在するわけですので、主催者は会議の目的を明確にし、その目的を達成するために、「静的」ではなく「動的」な仕掛けをすることも会議の質を高めるための重要な行動だといえます。
冒頭で会議の「ゴール」を説明し、最後に「ゴール」の達成度合いを確認する
主催者は会議を始めるときにまず、参加者に対してその会議のゴールを説明する行動を習慣化させることが大切です。「この会議が終わるときには、○○と○○が決まっていること」「○○の問題解決の結論が出ていること」「参加者全員が共有事項について、お互いにフランクに質問し合え、明確に確認し合えてスッキリしている状態ができていること」などです。このようなゴールについては、白板に書くか、摸造紙に書いて壁に貼るか、パワーポイントでスライドを用意して投影しておくことがお勧めです。会話が少し横道にそれ、コミュニケーションが混乱したときに、参加者全員が最初に説明を受けたゴールを「目」で再確認することができるからです。ゴールが書かれた紙を配布することも悪くはありませんが、視覚的効果や意識の焦点化効果は薄れてしまいます。さらに、会議の終了時には、主催者は最初に提示し説明したゴールが達成できたかどうかを参加者ひとりひとりに確認することが大切です。参加者にひと言ずつ話してもらうとなおベターです。必ずしも毎回ゴールが完璧に達成できるとは限りませんが、主催者は一喜一憂する必要はありません。大切なのは、主催者が会議の始まりと終わりにこのような行動をとることで、主催者も参加者も程よい緊張感と時間の大切さを再認識することになり、徐々に会議の内容が充実していくことなのです。
会議終了時に次回に繋げる「まとめ」をする
会議の終了時にはその場のゴールが達成できたかどうかの確認に加え、もうひとつ大切な行動があります。それは、次回に繋げる「まとめ」を行なうことです。共有のための会議の中でもその途中で解決しなければいけない問題や課題を参加者が認識することがあります。その場で議論することも可能ですが、時間切れになった場合は、主催者は問題や課題を放置してはいけません。次回の会議のアジェンダにするのか、特定の参加者だけに関わることなので全体会議ではなく個別会議にするのかなどを判断しなければいけません。議論のための会議であれば、その場で決まったことと、決まらなかったことを明確にし、未決定事項の議論は次回に持ち越すことになります。至急事項であれば、次回を待たず臨時会議を開催しなければいけません。このような「まとめ」の中で、次回のアジェンダやスケジュールを明確にするとともに、必要に応じて次回までに参加者が準備することの役割分担などを明確にすることで、会議を次回に繋げ、参加者の心に連続性を持たせることができるのです。
会議の場をマネジメントするということは、会議の開始から終了までの時間だけをマネージするのではなく、会議の前後の時間も含めてマネージすることなのです。このような5つの行動を習慣化させると、「形」だけでなく「内容」も重視することになり会議の質が高まるので、外国人の日本人を見る目に大きな変化が起きることになります。