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~「仕組み」と「人」と「場」をつくる~人事と組織のマネジメントーー第24回 「中傷」をマネジメントする!

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2012年09月21日

株式会社 J&G HRアドバイザリー
代表取締役社長 篠崎正芳
 

組織の中の「中傷」は厄介

 人は日本人でも外国人でも一時のウサ晴らしで人を中傷することがありますが、人の悪口や陰口をいう行動は基本的に人間の性なので、このような行動を完全に消滅させることは至難の技でしょう。ただ、このような行動が組織の中で多く起きて続くことはよくありません。組織の中で人を中傷する行動が広がる原因としては、会社や組織の体制や不公平な評価に対する不満、モチベーションの低下、仕事量の少なさから生まれる不安、などが代表的です。これ以外にも、個人的な妬みやっかみ、興味本位、あるいは、政治的な駆け引きという高度なことも原因となり得ます。中傷の現象は、組織の中で人の中傷を発信する人(=扇動する人)がいて、それに乗る人(=加担する人)がいて、お互いに心の「傷」を共有し癒しあっているだけです。そして、根本的に前向きな解決策が生まれることはまずありません。従って、組織の中にはマイナスのエネルギーが溜まり、働く人の心が荒廃していくだけなのです。

むなしい努力・・・

 このような負の行動が組織の中で発覚するころにはすでに発信元(=扇動した人)がわかりにくくなっています。なぜなら、発信元以外の人たちの心や行動がヒートアップし、場合によっては過激になり、結果的に発信元の初期の「温度」をはるかに上回っていることが多いからです。

 このような状況になってから、マネジメントが注意したところで、その注意のメッセージはターゲットが定まらず、広く分散し効力が薄れてしまいがちです。あるいは、今ごろ気づいても遅いのでは?という具合に“見えない”心理的な逆襲を受けるだけでしょう。
また、マネジメントが真剣に「犯人探し」をすることもありますが、これも効力があまりありません。なぜなら、その時点では、真犯人の姿が見えなくなってしまっていることが多く、便乗した犯人で溢れているからです。結果、聞き込み調査でもって数多くの社員を逮捕せざるを得ない状況となり、その現実味が薄れてしまうのです。仮に、便乗した犯人たちが一致団結して真犯人を差し出したとしても、共犯を認めることになり、後日、真犯人を中心とするグループからの仕返しを受けることさえありえます。まさに、イタチごっこなのです。

 そこで登場するのが、社内メールの監視です。これは「阻止」という点では一定度の効果はありますが、逆に、会社に対する警戒心や不信感などを社員に植えつけることになり、あまり健全ではありません。社内メールを監視し、阻止できたとしても、プライベートメールでの行為まで阻止することは難しいです。携帯メールも一般化している現在では、完全に阻止する方法はないと考えるのが妥当でしょう。

自責のマネジメントで事前の打ち手を!

 「できる」リーダーは火消しだけに奔走せず、火が起きるそもそもの原因を解決する行動を意識的に愚直にとり続けます。これは言うのは簡単ですが、実際のところ、人間の性や感情が障害となって、目の前で火(=中傷)を見たとき、人はなかなか当たり前の行動がとれないものなのです。組織の中には、火に油を注ぐリーダーがいる場合すらあるのです。また、特に、人の心に関わることになると、問題が起きないよう手を打つことがあまりにも当たり前なので、自分があたかも非常にレベルの低い仕事をするかのように感じるため、行動が起きないとも考えられます。

 リーダーが考えるべきことは、「なぜ、組織の中でこのような“負のエネルギー”や“負のネットワーク”が蔓延しているのか?」に対する答えです。この自問自答は大変勇気ある行動といえます。なぜなら、自責の行動だからです。日本人でも外国人でも「できる」リーダーは自責の行動プロセスの中で答えを探しだし、その答えをもとに、組織的な取り組みとして事前の問題解決に取り組んでいく行動習慣があるのです。

【原因1】 仕事が面白くない!
 組織の求心力が低下している可能性が高いです。具体的には、組織の方向性やゴールが不明確なため、ひとりひとりの役割まで不明確になり、自分の仕事に意義、やりがいを感じない社員が増えます。一方で本来、人を鼓舞して導かなければいけない各層のリーダーまでが行き先を見失い元気を失っているのです。この問題解決は、まず、リーダーからしっかりと方向感を考えて打ち出し、メンバーと対話することが絶対条件となります。下が仕事に面白みを感じないのは上の行動に問題があると考えるのが適切です。現場の社員から、やってみたい!実現したい!頑張ります!という明るい「生の声」を聞くことができるようにすることがリーダーの役割です。

【原因2】不満が多い!
 どんな組織でも人が働いている限り不満はあります。不満が多くなりすぎると人の心は乱れ、「傷」の共有が始まるのです。その前に不満の「程度」を察知し手を打つことが重要です。人は、他人に自分の不満を話すとある程度スッキリするという、案外単純な特性を持ち備えています。不満の対象次第では、他人に話した後、自分で解決する行動をとることができる人もいますが、組織的な事に関する不満の場合は、その場で話して気持ちはスッキリしても不満を解消することができるわけではありません。従って、「不満をいえる場」「不満を聞く人」「不満を解決する方法」が必要です。これら3つのことをいかにタイムリーに用意できるかどうかがリーダーの腕の見せ所です。

【原因3】仕事がヒマ!
 私の現場経験上では、この原因が中傷という行動に繋がっている確率が最も高いと考えています。メールや直接会話を通して人を中傷している多くの人はヒマな人です。しかし、これは個人の問題として片づけることはできません。ヒマな状態をつくっているのはマネジメントだからです。仕事が減ると人は仕事をしているフリをしながら徐々に不要な仕事をつくります。あるいは、他人の仕事に浸食し始め重複する仕事が増え、お互いにいがみあったり、正当化しあったりする行動が増えます。結局、本来の自分の居場所を見失うことから様々な不安を抱くことになり、気がつけば他人を攻撃して自分を守ろうという行動をとることになるのでしょう。
 特に、日本企業の海外拠点では、日本人が仕事を現地人材に任すことができず、抱えすぎてしまうことから、現地人材がヒマになり、「職」を失いたくないという心理が働き、お互いの足を引っ張り合うような中傷する行動が増えていくことになります。
国内外を問わず、ひとりひとりが目的や目標をもって明るく、本当に忙しく働いている職場では、人を中傷する行動は起きない、ということをリーダーは肝に据え、自責型のマネジメントをしていくことが大切です。