キャスト中国ビジネス

~「仕組み」と「人」と「場」をつくる~人事と組織のマネジメントーー第49回 質問に“答えてくれる”日本人、“答えてくれない”外国人

限定コンテンツ
2012年09月18日

株式会社 J&G HRアドバイザリー
代表取締役社長 篠崎正芳
 

 「現地社員は聞かれていることに答えないんです!YESかNOで答えてほしいのにいろいろと話し出すんです・・本当に困ります。どうすればいいんでしょう?」という相談をよく受けます。確かに、日本人と現地社員の間でこのような現象が起きている場面をよくみかけますが、相手の「知力」に問題がない限り、日本人の行動が大きな原因になっていることが多いのです。

 日本人は質問するときに、相手に気を遣いすぎるため、質問をはっきり表現しない傾向があります。これは、表現習慣の問題です。ただ、表現習慣を変えるには日ごろとは違う頭の使い方をしなければいけませんので努力が必要です。

 たとえば、「○○は○○だったと思いますが・・・そうでしたよね?」と聞きたいところ、「そうでしたよね?」を無意識のうちに呑み込んでしまって表現しないか、はっきり発音せずに語尾がフェードアウトしてしまうか、どちらかのケースが多いです。

 相手が日本人であれば、「○○は○○だったと思いますが・・・」云々を話しているときの表情や言葉のトーンから、その後の「表現していない質問」である「そうでしたよね?」を推察してくれる可能性が高くなります。さらに、答えとしてYES、NOのどちらを求めているのかも推察してくれます。YESを求められていると感じたら、肯定表現で答えたうえで、相手の期待以上のことを伝えようと答えを追加することが多いです。他方、自分の答えが求められていることと違う場合は、相手の気分を害さないように言葉を選びながら表現することになります。

 一方、相手が現地人材の場合は、残念ながら、「○○は○○だったと思いますが・・・」しか伝わらなくなってしまうのです。そうすると、現地人材はこの表現を「質問」ではなく「意見」ととらえ、議論を求められていると感じることになります。そして、自分の意見や考えを話し始めるのですが、相手の「期待」には応えていないことになるのです。仮に、最後に質問が表現されていても、前段の話が長いと、その話の内容が重要だと感じ神経がそこに集中してしまい、最後に表現された質問が「軽視」されてしまうことさえあります。つまり、結果的に、日本人は質問している“つもり”でも、相手が外国人の場合はそのように受け止められていないことが多いといえるのです。

 一般的な日本人が手を挙げて「質問なのですが・・・」と話はじめた内容を聞いていると、感想や意見が多く、「いつになったら質問を表現するのだろう?」と感じてしまうケースが大変多いです。私が会議をファシリテーションする場合、参加者に対して、発言するときには「意見」「提案」「質問」のどれなのかをはっきりしてもらうよう促すようにしています。新興国で通訳を使う場合は、特にこの点を明確にしないと通訳も困ってしまい、結果的に誤解を生む可能性が高まります。

 まず、意見は意見、提案は提案、質問は質問、と切り分けて話をすることが大切です。次に、質問はYESかNOの答えを求める質問か、あるいは、相手の考えや感じ方を求める質問なのかスタンスをはっきりさせることが大切です。そして最後に、質問はできるだけシンプルにそして語尾まで明確に表現することが大切なのです。このような思考と表現習慣を身につけると、「現地社員は質問に答えていない!」というストレスは激減するはずです。

 多くの一般的な日本人は、相手が質問に答えていない!と感じたとき、「あなたは質問に答えていません。まず質問にきちんと答えてください!」と相手に言います。実はこの時こそ、「あなたは質問に答えていません。もう一度質問しますね」と言って、同じ質問、あるいは、意味が変わらない範囲で多少の言葉を足引きした表現で質問を繰り返すことが大変重要なのです。

 質問している“つもり”の人は、同じ質問を繰り返し表現することができません・・・自分自身の質問表現の「特徴」を正しく認識し、そのうえで、相手にわかりやすい質問表現を身につけるための努力に励んでください!