障害者の中でも、健常者の社会に比較的溶け込みやすいのが肢体障害者です。肢体障害者の特徴を把握することは、相互に交流し、親密に共存していく上での助けとなり、業務を展開する際にも有利となります。肢体障害者は、一般に肢体に障害又は欠損があるのみで、心理面には特別な点や問題はなく、感知し、又は思考する認知過程において、健常者と何ら明らかな違いはありません。
多くの肢体障害者にとって、障害とは自らを押さえつけるものではなく、自発的な積極性及び不屈の精神で障害と戦っていく条件を与えるものであるため、彼らは頑強な意志を有しています。また、困難を克服する勇気を持ち、往々にして学習、生活及び仕事において驚異的な意志の力を発揮します。肢体障害者は健常者と同様に学習し、生活し、仕事をすることができるばかりではなく、社会に対し健常者よりもより一層の貢献をすることもできます。著名な数学者の華羅庚氏、中国障害者連合会主席の鄧朴方氏及び副主席の張海迪氏は、よく知られた肢体障害者です。
肢体にある障害により、彼らの学習、生活及び仕事には困難が付きまといます。その困難を前にしても、大多数の肢体障害者は勇敢に向かっていき、絶えず自らを向上させようと努めていますが、小数の肢体障害者は困難に屈服してしまい劣等感を抱くようになります。この劣等感の多くは、周囲のからかいや蔑視、意見、更には不適当な同情によって生まれます。時代にそぐわない周囲の評価は、誰にとっても重い心理的負担となり、自分自身に対する認識や評価に影響を与えかねず、自らを卑下し自己憐憫に陥らせ、ひいては自暴自棄になるおそれもあります。このため、肢体障害者を尊重し、時代錯誤の評価をせず、平常心で彼らに対することは、彼らが社会に順応し自らの価値を実現するということを支援する最上の方法なのです。
2006年4月の全国第2回障害者抽出調査の公開データによると、全国の肢体障害者数は2,412万人、全国障害者人口の29.07%を占めており、このうち上海における肢体障害者数は27.2万人、上海の障害者人口の28.88%となっています。上海の肢体障害者は、一部の重度障害者(保護政策対象ではないが安定配置対象である障害者)を除けば、ほぼすべてが就業しています。肢体障害者の就業適応性は非常に強く、主に分散就業(低視力障害者と同じように、分散就業が最も適しています。)により全市各地、各企業・事業組織、各業種に分布して仕事に従事しています。2006年12月の上海市障害者労働サービスセンターと上海社会科学院信息研究所との共同抽出調査では、次のような結果が出ています。
現時点での上海における肢体障害者の就業は52の業種に及び、その上位10業種は、小売業12.04%、通信設備及びコンピュータその他電子設備製造業8.68%、非鉄金属精錬・圧延加工業及び積卸運搬その他輸送サービス業がそれぞれ4.76%、紡織アパレル及び靴・帽子製造業4.20%、非金属鉱物製品業及び飲食業がそれぞれ3.64%、化学原料及び化学製品製造業、ゴム製品業がそれぞれ3.36%、金属製品業3.08%であり、このほか42の業種が就業先となっています。
上海において、肢体障害者が従事するのに適した役職は41あり、就業の多い上位10の役職は、行政事務担当者、倉庫保管人員、金属精錬及び圧延人員、化学工業製品生産人員、安全警備・消防人員、電子デバイス及び設備の製造・組立・調整試験・メンテナンス人員、その他生産及び輸送設備操作担当者とその関係人員、経済業務担当者、社会サービス及びコミュニティ生活サービス人員、機電製品組立人員となっています。
そのほかとして、ゴム及びプラスチック製品生産人員、紡織編織染色人員、裁断縫製及び皮革毛皮製品加工製作人員、食用油・食品飲料生産加工及び飼料生産加工人員、木材加工・人工板材生産及び木材製品製作人員、紙パルプ及び紙製品生産加工人員、ガラス・陶器・ほうろう及びその製品の生産加工人員、機械製造加工人員、合成薬品製造人員、建材生産加工人員、工芸美術品制作人員、印刷人員、機械設備修理人員、飲食サービス人員、ホテル及び旅行、フィットネス又はエンターテイメント施設のサービス人員、電力設備据付・運行・点検修理及び電力供給人員、エンジニアリング及び施工人員、検査及び計量人員、売買担当者、未分類のその他役職担当者、衛生専門業務技術人員、医療衛生補助サービス人員、教育従事者、報道・出版及び文化業務人員、文学芸術業務人員、企業責任者、科学研究人員等があります。
2003年10月からおよそ1年の間に、上海市障害者連合会は、上海市政府の「政府が出資しサービスを買い取る方式による就業役職の開発」という精神に従い、全市において「地域社会における障害者業務補佐員役職開発」という障害者就業プロジェクトを展開しました。これにより、全市の約6,000名の肢体障害者及び低視力障害者等の障害者が養成訓練を経て正式に「助残員」という役職で就職し、居民委員会及び村民委員会の民政幹部に協力して当該コミュニティ内の障害者関係業務処理に専従することとなり、障害者の就業圧力が大幅に緩和されました。
次に、中国における肢体障害者認定基準をご紹介します。
1.肢体障害者の定義
肢体障害とは、人の肢体の欠損、変形又は麻痺により引き起こされた人体の運動機能障害をいいます。
肢体障害には、次の状況が含まれます。
脳性麻痺:四肢麻痺、三肢麻痺、二肢の麻痺、単麻痺 片麻痺 脊髄の疾病・損傷:四肢麻痺、対麻痺 小児麻痺後遺症 後天性の四肢又はそのいずれかの切断 先天性の四肢又はそのいずれかの欠損、短肢、肢体奇形、低身長症 下肢長差を有する場合 脊柱の変形:後湾、側湾、強直 重度の骨、関節又は筋肉の疾病及び損傷 末梢神経の疾病及び損傷 |
2.肢体障害の等級
補助器具の助けがない状況下において、障害者の日常生活活動の能力について評価し点数化します。日常生活活動を、端座、直立、歩行、着衣、洗面・うがい、食事、排泄、書字という8項目に分け、1つ実行できるごとに1点、実行困難である場合には0.5点、実現できなかった場合には0点とし、これにより3つの等級に区分します。
(一)重度(1級) 日常生活活動の完了が完全に不可能又は基本的に不可能(0~4点)
1.四肢麻痺又は重度の三肢麻痺
2.対麻痺、両股関節を自発的に動かすことができない。
3.重度の片麻痺であり、一側の肢体機能をすべて喪失している。
4.四肢すべての切断又は先天性の四肢若しくはそのいずれかの欠損
5.三肢切断又は四肢若しくはそのいずれかの欠損(腕関節及び踝関節以上)
6.両上腿又は両上腕の切断又は欠損
7.両上肢又は三肢の機能の著しい障害
(二)中度(2級) 日常生活活動を部分的に完了することができる(4.5~6点)
1.対麻痺、二肢の麻痺又は片麻痺であり、他の二肢に一定の機能を有する。
2.両下肢の膝関節以下又は両上肢の肘関節以下の切断又は欠損
3.一上肢の肘関節以上又は一下肢の膝関節以上の切断又は欠損
4.両手の親指及び人差し指(又は中指)の欠損
5.一肢の機能の著しい障害、二肢の機能の重度障害、三肢の機能の中度障害
(三)軽度(3級) 日常生活活動を概ね完了することができる(6.5~7.5分)
1.一上肢の肘関節以下又は一下肢の膝関節以下の切断又は欠損
2.一肢の機能の中度障害、二肢の機能の軽度障害
3.脊柱強直:後湾変形が70度より大きい、又は脊柱側湾が45度より大きい。
4.下肢長差が5cmより大きい。
5.一側の親指及び人差し指(又は中指)の欠損、一側における親指以外の四指の切断又は欠損
6.低身長症(身長が130cm以下の成人)
級別程度とその点数
1級(重度)日常生活活動の完了が完全に不可能又は基本的に不可能 0~4点 2級(中度)日常生活活動を部分的に完了することができる 4.5~6点 3級(軽度)日常生活活動を概ね完了することができる 6.5~7点 |
【注】
下記の状態は、肢体障害の範囲に入りません。
1.親指及び人差し指(又は中指)を残し、他の3本の指を失った者
2.踵を残し、足の前半分を失った者
3.下肢長差が5cm未満
4.70度未満の脊柱後湾又は45度未満の脊柱側湾
まとめ
国家統計局及び第2回全国障害者抽出調査指導グループが公表した2006年第2回全国障害者抽出調査のデータは、次のとおりです。
全国障害者数 8,296万、全国の人口に占める比率 6.34%
このうち、
知的障害者 554万 全国障害者人口に占める比率 6.68%
聴力障害者 2,004万 全国障害者人口に占める比率 24.16%
言語障害者 127万 全国障害者人口に占める比率 1.53%
視力障害者 1,233万 全国障害者人口に占める比率 14.86%
肢体障害者 2,412万 全国障害者人口に占める比率 29.07%
精神障害者 614万 全国障害者人口に占める比率 7.40%
多重障害者 1,352万 全国障害者人口に占める比率 16.30%
女性障害者 4,019万 障害者人口に占める比率 48.45%
男性障害者 4,277万 障害者人口に占める比率 51.55%
都市・鎮障害者人口 2,071万人(24.96%)
農村障害者人口 6,225万人(75.04%)
1,2級重度障害者 2,457万 全国障害者人口に占める比率29.62%;
3,4級中度、軽度障害者 5,839万 全国障害者人口に占める比率70.38%。
15~59歳の障害者人口 3,493万 全国障害者人口に占める比率42.1%。
近年、中央及び地方の各級政府は、障害者の「バリアフリー」就業を実現させ、積極的かつ有利な条件を創出するべく、関連する優遇政策及び保護措置を実施しています。しかし、障害者の就業は依然として多くの困難や問題に直面しており、就業年齢に達し、かつ、就業能力及び就業意思を有する障害者が現時点で全国に約800万人存在し、毎年30万人前後のペースで就業を必要とする障害者労働力が増加しています。
これまでの障害者の主要就業ルートとしては、次の4つが挙げられます。
1.法に依る比率に従った就業として、雇用条件に適合する障害者を推薦し、雇用先が適宜業務役職を手配する。
2.政府及び社会の各方面が法に依拠し社会福利企業を設立し、障害者の就業を集中的に手配する。
3.自主求職志願の障害者が起業研修に参加するよう指導し、プロジェクトの確立を支援し、自営業への道を開く。
4.学習及び養成訓練を通じ、政府が開発及び購入する公益性役職での就業を手配する。
【注】
精神障害者は、企業が障害者を雇用し享受する優遇政策の範囲に暫定的に組み入れられていません(作業療養機構は除きます。)。また、多重障害者(複数の障害を併せ持つことをいいます。)の就業については、相対的に重度であるいずれか1種の障害に対応する障害者として計算しています。
国際社会、特に先進国と比較すると、中国の障害者認定基準は厳しいため、障害者人口の比率は全国人口のわずか6.34%と比較的低い値にとどまっています。現在、国際社会が公認している全世界の障害者比率は全世界人口の約10%であります
中国の社会及び経済の発展、教育水準の絶え間ない向上に伴い、先天性知的障害の確率は下降しており、薬品の誤使用による聴覚障害の発生も減少しています。しかしながら、交通事故による後遺障害及び過度のストレスによる精神疾患の比率は上昇を続け、白内障から視覚障害となる人数も驚異的な速さで増加しており、目下のところ有効な抑制策は見つかっていません。
障害者に関心を寄せ彼らを助けることは、人類の文化的進歩、社会調和と友愛の体現です。社会全体に中華民族の伝統的美徳を押し広め、各方面からの協力を仰ぎ、あらゆる手段を持って障害者が困難を解決できるよう支援することが必要であると同時に、障害者を尊重し、思いやり、かつ、支援する良好な社会の雰囲気を形成し、思いやりという名の陽光で一人ひとりの障害者の心を明るく照らし、多くの障害者が正真正銘の利益を手にすることができるようにしなければなりません。そのような新しい社会条件の下で、障害者の生活は改善され、彼らの生存権及び発展の権利はより良く保障されていきます。障害者が特に注目している就業問題を実情に即応した形で解決し、多くの障害者に就業機会をもたらすことが求められているのです。
キャストコンサルティング(上海)有限公司
CSR部 林偉