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視力障害者の就業状況

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2008年10月24日

まず、中国の視力障害者の認定基準についてご紹介いたします。

視力障害者の定義
「視力障害」とは、各種原因により両眼の視力に障害又は視野狭窄があらわれ、各種薬品、手術その他の療法を通じても視力を回復することのできない状態(又は、前記の療法を通じ視力を回復することが一時不可能な状態)にあり、その結果、健常者のなし得る業務、学習又はその他の活動ができなくなることをいいます。

視力障害には、盲及び低視力の2種類があります。
盲について

 1級盲:最高矯正視力が0.02未満又は視野の半径が5度未満
1級盲<0.02~光覚なし、又は視野の半径<5度

2級盲:最高矯正視力が0.02以上0.05未満又は視野の半径が10度未満
0.02≦2級盲<0.05、又は視野の半径<10度


低視力について

 1級低視力:最高矯正視力が0.05以上0.1未満
0.05≦1級低視力<0.1

2級低視力:最高矯正視力が0.1以上0.3未満
0.1≦2級低視力<0.3

注:
1.盲又は低視力は両眼についてであり、両眼の視力が異なる場合には、視力の良いほうの片眼を基準とします。
2.片眼のみが盲又は低視力であり、他眼の視力が0.3以上である場合には、視力障害の範囲に入りません。
3.「最高矯正視力」とは、レンズにより適切な矯正をして得られる最良の視力又はピンホール眼鏡を使用し測定した視力をいいます。
4.視野が10度未満である場合には、当該者の視力を問わず、すべて盲とされます。

 2006年第2回全国障害者抽出調査が公布したデータによると、中国には1,233万人の視力障害者がおり、全国の障害者人口の14.86%を占めています。この内、上海には15.8万人がおり、これは上海の障害者人口の16.77%に相応します。

 全国の視力障害者の中には877万人の盲人(白内障による盲が多くを占めています。)が含まれていますが、彼らは障害者の中で最も大きな障害を抱え、就業するのが最も困難な人々です。その就業ルートは非常に限られており、就業率は30%にも達しません。このため、彼らは特別な政策により保護されており、その政策の下で盲人按摩業は急速に発展し、現在では全国に1,500ヶ所以上の盲人医療按摩機構及び10,000ヶ所以上の盲人保健按摩機構があります。

 盲人は触覚が敏感であり、集中力が高いという独特の長所があるため、特に按摩作業に向いています。按摩は中華民族特有の医療・保健方法として、安全で効果が高く、簡単に行え、かつ経済的であることから、広く人々に親しまれ、また高い需要があるため、トレーニングを経て按摩技術を身に付けた盲人は引く手数多の状態です。これを受け、地方の各級政府及び障害者連合会は、大々的に盲人按摩業の発展を呼びかけ、盲人医療人員の育成と保健按摩師の養成訓練を拡大し、医療専攻の中等専門学校以上の教育を受けた盲人が医療単位において医療按摩に従事することを推進し、保健按摩のトレーニングを受け、かつ、職業技能鑑定を経て職業資格証書を取得した盲人が保健按摩を職業とできるよう数多くのルートを通じて手配をし、これらにより盲人の就業難を解決すると同時に、増え続けている按摩へのニーズに応えようと努めています。

 先日、私たちは上海市浦東新区東昌路にある上海古都梅保健按摩有限公司本店を訪れました。ここは、日本留学経験のある楊冬梅さんが経営されている按摩店であり、当日は楊さんから次のようなお話を伺うことができました。

  「当店は開業して約6年になります。今では上海戸籍の按摩師とその他の省・市戸籍の按摩師が合計30名ほどおり、そのうち半分は盲人按摩師です。お客様の多くは日本人で、約40%を占めます。その次が香港、マカオ、台湾、欧米からのお客様です。約500㎡の店内には、営業用のスペース以外にも従業員用の休憩室や食堂、宿舎を備えています。ここで働いている盲人按摩師は、障害者連合会からの紹介か同業の他店からの紹介で当店に来ており、大多数が青年期に病気や事故などにより失明したため、失明以前に9年間の普通学校での義務教育を受けています。また、盲人按摩の仕事に就く前に、全員が2年から3年の技術学校又は中等専門学校での専門知識と技術訓練課程を経て、按摩という中国に起源を発し、悠久の歴史を持つ伝統文化としての特殊技能を修得しています。彼らは善良でお客様に対して礼儀正しく、他者の気持ちを察する能力に長けており、加えて、熟練した按摩技術、細やかでありながらもちょうど良い力の入れ具合などにより、多くのお客様からご好評を得ています。彼ら自身もこの職業を大変気に入っており、自らの仕事を大切にしています。何人かの盲人按摩師は、開店以来ずっと当店で勤勉に、まじめに働いてくれており、ここでは非常に楽しく充実したときを過ごせるため、この先も当店で働いていきたいと言ってくれています。」

 ここ数年は、人々の生活水準の高まりに伴い按摩に対する需要も日々高まりを見せており、各種按摩院が続々と市場に進出していることから、按摩業界の競争は日を追うごとに激しくなっています。このため、経営者としての圧力も日増しに重いものとなっているようでしたが、彼女自身、長年の腰痛が盲人按摩のおかげで緩和されたということもあり、盲人按摩の専門性と自らの店舗の按摩師の技術には自信を持っていました。

 現場訪問を終えた後、私たちはある一人の盲人按摩師―劉按摩師にインタビューしました。劉按摩師は17歳の時、不慮の事故により両目とも失明してしまい、その当時は生理的にも心理的にも非常に大きなダメージを受けたとのことです。その後、数年間の心理状態の調整期間を経て中等専門学校に入学し、3年間の基礎課程と中国医学理論、人体解剖、経絡学及び推拿学等の専門課程を履修し、卒業後から今日までの約10年間、ずっと按摩の仕事に従事しています。「古都梅」での仕事は既に5年になり、勤務時間は平均して毎日4時間、休みは1週間に1日で、毎月の純収入は2,000元以上です。仕事は楽しく、時間のあるときは発声ソフトウェアを利用してチャットをしたりメールの送受信をしたりしており、充実した生活を送っています。インタビュー中、劉按摩師は常に満面の笑顔をたたえ、自らの生活において多くの不便なことがあることを感じさせないほど朗らかな話しぶりで、彼の笑顔や言葉の端々から、私たちは彼が人生を悲観的に捉えておらず楽観視していること、生活を楽しんでいることを深く感じることができました。

 自分の店を持ちたいか質問したところ、劉按摩師は「もちろんです。条件さえ整えば、絶対に店を開きます。」と答えてくれました。彼のこのシンプルな答えは、却って私たちに深慮を促し、現状における盲人の生活及び就業の詳細な状況について目を向けさせ、資金と就業ルートが依然として大きな問題であることを再認識せずにはいられませんでした。劉按摩師のような希望を持つ人々に対し、賃料の安い用地や低利息ローンを提供するといった優遇政策が政府から出されれば、盲人按摩事業はより一層大きく発展していくことでしょう。

 盲人が腕の良い「身体の按摩師」であることは周知のとおりですが、それ以上に「心の按摩師」としても優秀であることはあまり知られていません。人体には自己調節機能が備わっており、ある器官の機能が弱まった場合にはその他の器官の機能が強まり、代替や補償作用を果たします。これは「代償機能」と呼ばれています。盲人は目が見えない代わりに聴覚と視覚が特に発達しており、健常者のそれと比べて優れているばかりではなく、歩いている時に聴覚により物体との距離を判断したり、会話の際に相手の心境を察知したりすることもできます。

 2005年12月15日、上海市盲人協会は市の障害者連合会において、初めて14名の盲人に心理カウンセリング資格証書を交付しました。また、2006年02月08日には北京市障害者活動センターにおいて、1年をかけて普通心理学、社会心理学、発展心理学、心理カウンセリング技能及び心理テスト技能等の10課程に及ぶ育成訓練を経た22名の盲人に対し、労働部中国就業指導センターから心理カウンセラー証書が授与されました。

 主催者によると、養成訓練に参加したある盲人は、「盲人按摩を仕事としていると様々な人々との接点ができ、その人たちとよく話をするのですが、話していて思うのは、多くの人が競争により大きなストレスを感じており、大なり小なり『心のコリ』を抱えているということです。勉強して証書を取得した後には、そういった人々の役に立てるようになりたいと考えています。」と感慨深げに話していたとのことです。また、ある教師は、「盲人のためにこのような課程を開設した理由は、一つには盲人は健常者と比べ、人々の真実の心理・情緒を把握することに長けていること、もう一つには心理カウンセリングを求めてやってくる人々は秘密保持を徹底して欲しいと考えるため、視力に障害のある盲人の前では、よりリラックスしてすんなりと心理カウンセリングを受け入れられることが挙げられます。」と話してくれました。

 盲人心理カウンセラーという職位により盲人の就業分野は広がり、盲人の多くが按摩業界に主に就業していた従前の状況から、現在では、斬新で実用的、かつ、学びやすく彼らに適した就業形式の選択が可能になっています。加えて、関係部門は、より多くの盲人のために就業分野を広げるべく、証書を取得した盲人のために資格研修を実施し、同時に盲人心理カウンセリングホットラインを開設することも構想しています。これら按摩師、心理カウンセラーのほか、盲人の従事している職業には、ピアノ調律士、公文書・記録台帳管理者、エンターテイメント関連職、社会福祉関連職等があります。

 上海での低視力障害者の就業分野は相対的に広範であり、彼らの適応性も比較的強いため、就業率は90%以上に達しています。上海障害者労働サービスセンター及び上海社会科学院情報研究所が実施した2006年12月の抽出調査のデータによると、上海の低視力障害者の就業先は38業種に及び、その中でも小売業に比較的集中しており、就業率は17.24%に達します。5%以上であるのは3業種あり、それぞれ、通信設備及びパソコンその他の電子設備製造業(7.76%)、金属製品業(6.90%)、衛生(5.17%)となっています。そのほか、アパレル紡績、靴及び帽子製造業、建物及び土木工事建築業はいずれも4.31%、繊維業、ゴム製品業、非鉄金属精錬及び圧延加工業並びに専用設備製造業はいずれも3.45%という結果が出ており、その他にも28の業種において低視力障害者が就業しています。

 上海において、低視力障害者は31の職務に就業しています。比較的集中している職務は倉庫保管担当であり、その次が金属精錬及び圧延担当、行政事務担当、その他生産・輸送設備操作担当及び関係人員、販売担当、社会福祉及びコミュニティサービス人員、機械製造加工担当、化学工業製品生産担当、検査及び計量担当、未分類のその他従業人員と続き、このほかに21の職務があります。

 盲人は、日常生活においても仕事においても、健常者より多くの困難に遭遇します。このため、政府は盲人についての特殊な政策を実施することにより補償を与えており、その例としては、企業が1名の盲人を雇用し就業させた場合には、2名の障害者の就業としての比率に従い計算することができる等があります。

 社会全体が隣人である盲人により一層の関心を持ち、盲人の就業というバリアフリーの「盲人のための道」を共同で作り上げていけるようになることを、切に願ってやみません。

 

キャストコンサルティング(上海)有限公司
              CSR部   林偉